なぜ巨人は西武アンダーハンド與座からのリレーに16年ぶりの打者27人「準完全」に封じられたのか?
何とか突破口を、と意気込んだ吉川が左打席に入り、構えた刹那に與座はクイックモーションで初球を投じた。ボールをセットしてから始動まで2秒から3秒。外角低目の121kmのスライダーを引っかけた吉川は一ゴロに倒れた。一方で、與座は「長持ち」と言われる、通常よりさらにセットの時間を長くする投球を織り交ぜていた。こちらは7秒から8秒。そのモーションの時間差は、4秒から5秒もある。これがフォームの緩急であり、ボールの緩急と組み合わせれば、そのパターンは無限に近くなる。 実は3回終章時点で與座の球数は「50」に達していた。そこへ積極的に打つ、という指示が出され、3番・丸も初球の131kmのストレートを打ち損じてセカンドフライに倒れた。吉川が幻惑されたクイックモーションの残像がちらついていたのかもしれない。 4回はわずか7球で終了。先頭の7番・立岡宗一郎(32)が初球を打ってレフトフライに倒れた6回も9球で三者凡退に終わった。捕手の森友哉(26)が常に素早い返球を心がけていた点を含めて、辻監督はテンポのよさが巨人打線を翻弄したと振り返った。 「工夫の跡が見えたよね。クイック投法が入ってきて相手打者もタイミングがずれたと思うし、(森)友哉もそれに準じて早く返球してテンポよくリードしてくれた。アンダースローのピッチャーがテンポよく投げてくると、やはり打者は嫌だからね。そのなかで早打ちしてくれたことも、球数が少なくなった点で逆によかったと思います」 與座は加えてピッチングに高低の変化も加えていた。例えば2回二死で左打席に立った6番・ポランコ(30)は、6球すべてを高目に集められた末に、フルカウントから131kmのストレートの前に空振り三振を喫している。一巡目から積極的に高目を攻めた配球を、與座は意図したものだったと明かしている。 「ベルト付近を省いた低目と高目を意識して投げ分けるようになって、ちょっとずつですけど、打者が嫌がっている感じのファウルといったものが見えてきました」 今シーズンの與座は開幕ローテーション入りを果たすも、初登板だった3月31日の日本ハム戦で5回途中4失点を喫して負け投手となり出場選手登録を抹消された。