もしもあなたが「がんです」と言われたら、探すべき病院は「近くて普通」「遠くて最高」どっち?知っておきたい「がん治療のための理想の病院」
治療に入る前に。希望を持ち続けることそのものが「がんを根治する」可能性につながる
とにかく、1日でも長生きをしてがんと共存していけば、いつの日か根治や、あるいは他の病気で他界するまでの長い延命に繋がる治療が標準化されてくる。だから希望を失わないことがとても重要なのだ、と新見先生は語ります。現在は「よい奏功を見せる可能性のあるもの」が登場してはどんどん実臨床に上がってくるから。 「先に述べた経済的負荷を『経済毒性』と呼びます。お金がかかりすぎるという意味ですね。経済毒性の低さまでを含めると、最高の治療は確かに標準治療です。例えば、いま最高の放射線治療である陽子線治療や重粒子線治療は保険を適用できるがんの種類に制限があり、適用しても約300万円と高額なため、誰もが受けられるわけではありません」 しかし、どの治療も玉石混交の状態から「この治療が有効である」と信念を持った研究者が長い年月をかけ、時には次世代に託しながら磨き上げていったものです。 「たとえば、ぼくの専門のひとつに免疫学がありますが、人類にとっての初のワクチンであるジェンナーの種痘はあまりにも有効でした。また、世界初の抗生物質であるペニシリンも画期的な薬剤で、瞬く間に普及しました。どちらも、それらの治療法が登場して以降とそれ以前で人類の予後が大幅に変わった瞬間です。よりよい治療というのは常に未来にあるという見本ですね」 ここまでの前編記事ではがんの治療の概要を教えてもらいました。続く後編では「がんの治療を選ぶときに記憶しておくべきこと」を教えてもらいます。
オトナサローネ編集部 井一美穂