鉄道運賃改定、値上げ・見送り二極化…JR東日本・東海が改革求む「総括原価方式」の厳しさ
JR東日本は12月、2026年3月の運賃改定を国土交通省に申請した。鉄道運賃は国土交通省が「総括原価方式」にのっとり認可しているが、4月に鉄道事業法に基づく関連通達を改正。JR東日本はこれを受けて検討を進め、申請したものの、喜勢陽一社長は「今後も運賃の柔軟化の要請を続ける」と述べるなど、現状の仕組みに不満をにじませる。 【写真】JR東日本が25年春からワンマン運転を実施する常磐線 JR東日本は26年3月に全エリアで平均7・1%値上げ。山手線などの初乗り運賃で10円の値上げとなり、現行の150円から160円となる。JR東日本は87年の民営化後、消費税増税以外では値上げは初めてで、国交省の総括原価方式の算定基準の見直しにより実現した格好だ。 運賃改定による増収効果は年間881億円となるが、総括原価方式の計算式によると、収入と原価の差し引きが同911億円の赤字から運賃改定で同30億円の赤字となるにとどまる。渡利千春副社長は「公共交通機関は過度の収入を得てはいけないので黒字にはできず、ゼロが最大になる」と、鉄道事業者に課せられる総括原価方式の厳しさを吐露する。 JR東海は現状、運賃改定を見送る方針を示しているが、その理由について丹羽俊介社長は「(運賃が)総括原価方式の上限で現在の当社の状況では運賃改定を申請できない」と話す。JR東海は利益率が上限に達しており、改定した原価算定要領でも値上げができない。これがJR東海が誇る高い利益率の源泉だが、「競合する航空や高速バスは運賃が届出制」(丹羽社長)と、運賃の面では不利な競争環境にあることを訴える。 総括原価方式は公共性の高いサービスの料金の算定に用いられ、鉄道のほかには電気やガスなどに適用されている。ただ、鉄道は電気やガスよりも競争が厳しく、事業環境は異なる。鉄道各社では今後も総括原価方式のあり方について要請を続けるが、国交省がどこまで言い分を認めてくれるか、タフな交渉が続きそうだ。