「腐らずあきめず」西武の投手コーチ兼任の40歳サウスポー内海哲也が達成した通算2000イニングの価値
しかも、イニングはまだ伸びる可能性もあった。日本ハム打線を3安打に封じ、巨人時代にバッテリーを組んだ宇佐見真吾に喫した、5回の2号ソロだけの1失点に抑えた。球数も「63」だった内海自身が「行く気満々でした」と振り返る。 「でも、最初から70球ぐらいの予定だったみたいで。ファームでやってきたことをそのまま、背伸びせずに出せましたし、ちょっと出来すぎかな、という感じもするので、いいところで終わらせていただいた、と思っています」 マウンドを降りた時点で西武が2-1でリードしていたため、内海は昨年6月9日の横浜DeNA戦を最後に遠ざかっている、勝利投手の権利を手にしていた。 しかし、2番手の平井が登板した6回に状況が一変してしまった。 先頭の2番・今川優馬が初球をレフト前へ運ぶ。続く松本剛は送りバントを仕掛けるも打球を殺せず、しかもピッチャー前に転がしてしまった。1-6-3のダブルプレーと思われた直後に、ショートの中山誠吾のグラブからボールがこぼれた。 完全捕球後の落球として塁審はアウトを宣告したが、すかさずBIGBOSS新庄剛志監督がリクエストを要求。リプレー検証の結果、判定が覆ってオールセーフになった。 本来ならば西武のショートには球界を代表する名手、源田壮亮が君臨する。しかし、前日の日本ハム戦で自打球のために負傷交代。一夜明けた検査で「右脚舟状骨骨挫傷」と診断された源田は出場選手登録を抹消され、代わりに登録されたドラフト6位ルーキーの中山(白鴎大学)がいきなり一軍デビューを果たしていた。 「すごくショックだと思うよ。あそこから逆転されたわけだからすごく痛いけど、それを生かすも殺すも、彼がこれからどのように野球へ取り組んでいくのかどうかだからね。将来、ああいうことがあったなと笑い話で済ませられるかどうか」 一塁への送球を焦った中山へ送られた辻発彦監督の厳しくも温かい檄は、同じく先発マスクをかぶったドラフト3位ルーキーの古賀悠斗(中央大)へも向けられた。 「非常にいいリードをしていたんだけど、慌ててセカンドへ投げた結果、サードへ進塁された。若いときには嫌というほどいろいろな経験をするから、それらをプラスにして、次からは同じミスをしなきゃいい。われわれにはそれしかないですよ」 古賀のボーンヘッドは、4番・野村佑希への初球で起こった。 外角低目に外れたスライダーに対して、野村がバントの構えを見せる。報道によれば、BIGBOSSはあえてバント失敗と見せかけたと試合後に語っている。意図的に飛び出した二塁走者の今川は、古賀が二塁へ送球した直後に迷わずにスタート。楽々と三盗を成功させ、野村がしぶとくライト前に運んだヒットで同点のホームを踏んだ。