【宮崎祐樹連載#30】あの「戦力外通告」場面に居合わせた妻の反応は意外なものだった…
【宮崎祐樹連載 オリのゴリBsを知り過ぎた男(30)】2019年は僕の現役最後のシーズンとなりました。キャンプから二軍スタート。その後もチーム内での自身の立ち位置などから鑑みて、何となく察している自分もいました。 10月1日、家族でスーパーへ買い物に出掛けていた時でしたね。屋上の駐車場で携帯電話に着信が入りました。相手は球団マネジャーで、翌日の2日にスーツで球団へ来るように指示されました。 そのタイミングで助手席に座っていた妻にも事実を伝えました。テレビのドキュメンタリー番組で「戦力外通告」という場面を知る人は多いと思います。プロ野球選手が現役続行か、引退かの岐路に立たされるあの場面です。 こちらとしては、家族として妻に申し訳ない思いを抱きながら自分の言葉で説明しました。でも、リアクションは意外なものでした。ありゃ、そうなんだねという感じで、あっけらかんと笑顔で聞いてくれました。 そういう対応をしてくれて、僕はめちゃくちゃ助かりましたね。どんな顔をして伝えようかとか、本当に考える時間もなく事実を伝えたのですが、僕としてはホッとさせてもらいました。 気を使ってくれたんだと思います。深刻な空気や悲壮感を全く抱かせない振る舞いに救われました。どちらかというと、僕自身の不安な思いすらも吹き飛ばしてくれたんですね。それで、自分の取るべき次の行動に進む決心もつきました。 翌日、球団事務所がある大阪・舞洲に向かいました。予想した通り、戦力外通告を受けました。僕自身はその時点で現役続行の意思を持っていたので、11月12日に予定されていた12球団トライアウトに向けてコンディションを整えることに集中しました。 練習といっても一人でできることは限られています。現役続行へ、練習することを決めた僕のもとに「手伝います」と言って、2人のプロ野球選手がサポートを買って出てくれました。DeNAの宮崎敏郎と捕手の伊藤光です。敏郎は同じ佐賀出身であり、社会人野球セガサミーの後輩。伊藤はオリックスでも18年までチームメートだった仲間です。 他にもベイスターズでプレーし、先に引退していた赤堀大智(セガサミー後輩)も、トライアウトに向けた自主トレをサポートしてくれました。有志で練習を手伝ってくれたみんなには本当に感謝です。 結果的にトライアウトの末、現役続行とはなりませんでした。すると、現実的に次の仕事は…ということになります。プロ野球選手は所属球団から来季の契約を結びませんと言われてしまえば、ドラフト前と同様に野球の上手な一般人に戻ってしまいます。 本当にありがたいことですが、球団からセカンドキャリアを心配していただいたことも事実です。ただ、この当時の自分は違う決断をしました。プロ野球選手ではなくなった僕に対して、最初に声を掛けてくれた会社。それが「アクサ生命」でした。もともと興味があった分野でありますが、それまで金融関係について勉強したことはありませんでした。 そこからは覚悟を決め、今現在もご縁をいただいている皆さんの力になれるよう全国を飛び回る生活を送っています。
宮崎祐樹