ジロ・デ・イタリア2024有力選手プレビュー|ダブルツールへポガチャルの第一関門
ジロ・デ・イタリア2024有力選手プレビュー|ダブルツールへポガチャルの第一関門
2024年のロードレースシーズン最初のグランツール、ジロ・デ・イタリアが5月4日に開幕する。トリノでの開幕から首都・ローマでのフィナーレまで、3週間かけての総走行距離は3400km、総獲得標高は44650mに及ぶ長き戦い。今年の大会は最大の目玉となるタデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツ、スロベニア)の参戦や、豪華スプリンター陣そろい踏みなど、見どころが盛りだくさん。今大会で押さえておくべき選手やポイントをプレビューしていこう。
最大の焦点はポガチャルがどれだけ大差をつけるか? 他選手は総合表彰台が現実目標?
前回は最終日前日の山岳個人タイムトライアルでの大逆転。プリモシュ・ログリッチ(当時ユンボ・ヴィスマ、スロベニア)が、ゲラント・トーマス(イネオス・グレナディアーズ、イギリス)との激闘の末に、悲願のマリア・ローザを獲得した。このときは3週間の総獲得標高が50000mを超える“クライマーズ・ジロ”だったが、今回は数字の上では山岳比重が減り、昨年とは違ったレースを見ることができるだろう。 なんといっても、ポガチャルの参戦がすべてである。昨オフの段階でジロ出場を明言し、ツール・ド・フランスとの“ダブル・ツール”を目指すと高らかに宣言。パリ五輪イヤーで多くの選手が出場レース選択に慎重な様子を見せるなか、ポガチャルだけは目標を固めていまなおその姿勢にブレがない。 1998年のマルコ・パンターニ以来となるジロとツールの2冠に向け、レース数も絞っている。3月初旬のストラーデ・ビアンケで圧巻の82km独走勝利でシーズンインすると、ミラノ~サンレモ3位、直後のボルタ・ア・カタルーニャでも圧勝。昨年は落車で大けがを負ったリエージュ~バストーニュ~リエージュでも悪夢を払拭する完勝。このところの勢いを誰も止めることができない状態だ。 戦いぶり、そしてバリューからしても、ポガチャル「一強」と見る向きが強い。今大会は第2ステージから山岳コースが組み込まれることもあり、早々にレースを掌握するのでは? との声もあるほど。アシストにラファウ・マイカ(ポーランド)やミッケル・ビョーグ(デンマーク)といったレギュラー陣を配備し、体制は完全に整っている。 ただ、何が起こるか分からないのがグランツール。昨年のツールでまさかの大ブレーキを喫した姿をいまなお鮮明に覚えている方も多いことだろう。それに、ジロは天候が変わりやすく、体調に直結することも考えられる。順当に戦えばマリア・ローザに一番近い選手であることは間違いないが、ポガチャルといえど1日でも取りこぼすことなく走り切ることが大会初制覇への最大条件といえよう。 ポガチャルにストップをかけるとしたら誰だろうか。昨年の雪辱に燃えるトーマスか、今年はジロにフォーカスするベン・オコーナー(デカトロンAG2Rラモンディアール、オーストラリア)か、イタリアでの3週間を知り尽くすダミアーノ・カルーゾ(バーレーン・ヴィクトリアス、イタリア)か。先のリエージュで2位となり復調を印象付けたベテランのロマン・バルデ(dsmフィルメニッヒ・ポストNL、フランス)、強力ヴィスマ・リースアバイクの若きリーダーのキアン・アイデブルックス(ベルギー)といった名も挙がる。 ただやはり、真っ向勝負ではポガチャルに対して分が悪いのは否めない。ポガチャルの、さらにはUAEチームエミレーツの虚をつく動きを仕掛けないことには、流れを引き寄せるのはなかなかに難しい。展開によっては、早い段階で総合表彰台狙いにシフトする選手も出てくるかもしれない。覚悟を決めてポガチャルに対峙しにいくか、リスクを最小限にとどめながら自身のチャンスを追い求めるか、各選手たちの判断も見ものになってくる。