部活に「外部指導者」導入で生徒は余計に忙しくなる?
機会保障の場としての部活動
外部指導者の導入は、一見すると車の両輪として教員と生徒の両者の状況を改善するかのように見える。たしかに教員の負担を軽減しうるし、生徒により専門的な指導を提供しうる。だが、とくに後者の生徒との関わりについては、より専門的に、より積極的に、すなわち強化選手を育成するかのような志向を有している。 はたして部活動とは、専門性の高いトレーニングを毎日たくさん実施するという場でよいのだろうか。ここで部活動とは改めて何のためにあるのか考えなければならない。 私は、部活動を「強化選手養成の場」にするべきではないと考える。学校教育の一環としての部活動がもつ存在意義とは、放課後に付加的なスポーツや文化活動の機会が、低額で生徒に提供される点である。すなわち、スポーツや文化活動に気軽に親しむための「機会保障の場」として、部活動を位置づけるべきである。
部活動の総量規制へ 「ゆとり部活動」の提案
では、強くなりたい生徒はどうすればよいのか。 それは公共サービスとして学校が担うべきことではなく、民間のスポーツクラブやお稽古事にゆだねられるべきである。実際に、水泳、卓球、サッカー、体操などの競技種目においては、トップアスリートやプロはすでに民間で育っている。 部活動を、最低限の機会保障の場としてとらえるならば、土日を含めて連日のように数時間も練習する必要はない(なお「強化選手養成の場」においても休養日はちゃんととるべきである)。もちろん、朝練や土日の練習・試合も不要だ。すなわち、部活動の総量規制(練習や試合の活動総量を抑制する)による「ゆとり部活動」を目指すべきである。
総量規制は教員の負担減にもつながる
当該活動に親しむという目的であれば、部活動は週に3日もあれば十分だろう。スポーツ庁の鈴木大地長官も、「大学のサークルのような、ゆるく楽しめる運動部があっていいと思います」(『朝日新聞』2017年6月30日)と、部活動の未来を構想している。 この総量規制は同時に、指導する側の教員の負担も大幅に削減する。単純に言えば、活動総量は週6日以上の練習がある今の状況に比べると、週3日の活動の場合、教員の負担は半分に減る。 そこで外部指導者もうまく活用できれば、教員全員の強制的な顧問就任という事態も回避しうる可能性が高まる。また、総量を小さくすれば、部活動をまるごと外部化させることの現実味も増してくる。 今日、生徒と教員のいずれにおいても、部活動の負荷が大きくなっている。部活動が生徒と教員の両者にとって安心して取り組める場になるよう、制度を設計していく必要がある。 【うちだ・りょう】 名古屋大学教育学部・大学院教育発達科学研究科 准教授。学校リスク(スポーツ事故、組体操事故、教員の部活動負担・長時間労働など)の事例やデータを収集し、研究。専門は教育社会学。博士(教育学)。ヤフーオーサーアワード2015受賞。著書に『ブラック部活動』(東洋館出版社、近刊)、『教育という病』(光文社新書)、『柔道事故』(河出書房新社)など。