イングランド優勝のカギを握るか。19歳のファッション番長コビー・メイヌー
文 田島 大 6月14日(金)に開幕するUEFA EURO 2024で、19歳の“ファッション番長”が優勝候補の大本命を頂点に導くかもしれない。
抜群の存在感を放つ新鋭ボランチ
今大会のイングランド代表は最強の中盤を誇る。レアル・マドリーの王様であるMFジュード・ベリンガム(20歳)やアーセナルで1年目からチームの心臓に定着したMFデクラン・ライス(25歳)。さらに今季プレミアリーグでリーグ年間最優秀選手と記者協会年間最優秀選手の2冠に輝いたフィル・フォーデン(24歳)もいる。そんな豪華な顔ぶれの中で、中盤の底から世界的MFたちを操るのは19歳の新参者かもしれない。 マンチェスター・ユナイテッドのMFコビー・メイヌーがプレミアリーグで初スタメンを飾ったのは半年前。昨年11月末のエバートン戦に出場すると、その後は細かい技術と10代とは思えない落ち着きでユナイテッドに欠かせないプレーヤーとなった。今年3月にはブラジルを相手にA代表デビューを果たし、3日後のベルギー戦ではマン・オブ・ザ・マッチに選ばれた。 シーズンのフィナーレを飾る先月のFAカップ決勝では宿敵マンチェスター・シティを相手にゴールを決めてタイトルも手にした。そして今回のEURO 2024では、トレント・アレクサンダー=アーノルド(リバプール)やコナー・ギャラガー(チェルシー)を抑えてボランチの一角として先発起用される可能性がある。
先人たちから多くを学び急成長
まさに時の人だ。人気ブランド『UGG』のスリッパを開催地ドイツに持ち込んだだけでニュースに取り上げられる注目ぶり。とはいえ、数年前まではEURO 2024に出場するなんて考えられなかった。ライスやフォーデンたちと一緒にプレーすることについて「2年前に『FIFA(サッカーゲーム)』で使っていた選手たちと、今は一緒にプレーしながらピッチ上で言い争っているんだ。クレイジーだね」とファッション誌『Dazed』のインタビューで語った。 子どもの頃はマンチェスターCの下部組織の練習にも参加したことのあるメイヌーだが、正式にユナイテッドのアカデミーに入団してから赤いチーム一筋。憧れの選手は「笑顔で自分を表現していた」という元ブラジル代表のロナウジーニョだが、もちろんユナイテッドの先輩、とりわけユナイテッドの黄金期を支えたポール・スコールズのプレーにも感化されたという。ここ数年はユナイテッドに所属するポルトガル代表MFブルーノ・フェルナンデスやブラジル代表MFカゼミーロの動きを間近で見て学んできた。「昨季、トップチームの練習に参加するようになり、彼らがどのようにしてピッチ上で素早く判断するのか注目し、それをまねるようにした」 元フランス代表DFラファエル・バランからは「一番の投資は自分の体にすること」という素晴らしいアドバイスを受けたそうだ。だから普段は家で大人しくしているが、19歳の青年なのでファッションにも敏感だ。好きなブランドとして『ボッテガ・ヴェネタ』、『ルイ・ヴィトン』、『クロムハーツ』、『Enfants Riches Déprimés(アンファン・リッシュ・デプリメ)』といった高級ブランドを挙げつつ『Clints(クリンツ)』、『Corteiz(コーテイズ)』のようなストリートブランドも愛用する。 ファッション誌の表紙を飾るまでになったコビー・メイヌーは、1年前、いや半年前までは考えられなかった大舞台に立とうとしている。果たして19歳の若武者は、イングランドを初の欧州制覇に導くことができるのだろうか。 グループCのイングランドは16日の初戦でセルビアと激突する。