「もう、中学受験をやめたいんです!」ワンオペ「中受」に苦しむ母。娘は円形脱毛、母はキャリアを諦めるという令和の「中受問題」とは
「志望校の出題傾向を知り尽くした塾に通って過去問を解けるようにするというのが私たちの頃のやり方。でも、今の『中受』は大学受験の変化に伴って、学力とか知識力だけでは太刀打ちできないケースも多いんです」 娘は暗記タイプの学習はそこそこ得意でも、対応力や思考力には大いに難がある、と理子さん。しかし、志望校は苦手なタイプの問題が頻出されていることで有名なのだそう。 「時事問題についての自分なりの見解とか、写真を見てどういった場面かを説明するというような表現力が問われる問題もあるんです。娘は地頭の出来がもうひとつなのか、そういう主体性が重要な問題にめっぽう弱い気がしています...」 理子さんは、自分1人では娘の塾のサポートをできないと思い、4年生からは「塾の勉強の補助」として家庭教師に週3回、来てもらってるそう。 「年間の教育費が大変なことになっています。昨年1年間で、160万円は費やしたと思います。でも仕方ないんですよ、娘は飲み込みが悪いというか集中力が続かないというか。4年生まではSAPIXの真ん中のクラスにいましたが、5年生の今、一番下のクラスに在籍しています...」 SAPIXでは、定期的にテストが行われ、そこで毎回、点数に合わせてクラス替えが行われる。娘は5年生になってからはずっと、最下位のクラスから上がることができていないという。 「先日、SAPIXの面談があったんです。当然ですが、今の成績で慶応は難しいと言われました。そして先生が出してきた候補の私立中学は、どれも、私が知らない学校名でした...。 本当は夫にも同席してもらいたかったのですが、夫は娘の教育は『母親の役割』だと決めつけていて...。義母も正社員として働きながら、夫を含め、3人の子どもを慶応に入れたんです。だから、夫も義母も、受験のサポートは全て母親の『私の役目』だと、ことあるごとに言うんです。 私だって証券会社で順調に積んできたキャリアをまだまだ伸ばしたいんです。もっと仕事に集中したいんです。こんな母親は間違っていますか?」 昨年の11月に都内の義実家で義父の誕生日会があったという理子さん。そこでも、義父母に責められることに。 「お義母さんは、本当にキツイ人で。娘の前で、私に『塾の最下位のクラスって、どういうこと?ちゃんと理子さんは子どもの将来をを考えてるの? それで、慶応に入れるの? そろそろちゃんとしなさい!』と。 娘はその場で泣き始めました。当然ですよね。もう、誰が悪いのかわかならくなって、私も涙がにじみ出てきました。ふと、隣に座っていた娘の頭に目をやった時、鳥肌が立ちました。10円どころではない、500円玉大のハゲがうっすら見えました。帰りの電車で、娘の髪をかき分けてみたら、3つも500円玉ハゲがありました...」 日々、娘のケアをしてきたつもりの理子さん。しかし、円形脱毛に全く気づかなかった母親として自己嫌悪に陥り、中学受験をやめたくなっていた。その後、中学受験に向けて起きた、さらなる問題については後編で詳報する。 取材・文/大分 恵み PHOTO:Getty Images