「病気も全部代わってあげたい」母は言った。すい臓がん末期の父が「別にどこか痛いとか、気持ち悪いとかじゃない」それでも、苦しんだ3つの症状とは
こんにちは。神奈川県在住、フリーライターの小林真由美です。ここ数年のマイテーマは「介護」。前回に続き、今回も義母と同時期に経験した「もう一つの介護」について書きたいと思います。その対象となったのは、当時83歳の父です。 日頃から趣味を楽しみ、適度に運動もこなし、地域の活動にも参加。まだ残る黒々とした髪をいつも丁寧に整え、身だしなみには人一倍気を使っている。そんな姿を見ていたからなのか、「介護はまだまだ先」と勝手に思い込んでいた私。でも、そんな父を突然介護することになるなんて。そして、数ヶ月後に「別れの日」が訪れてしまうとは、夢にも思いませんでした。
「これまでの経験が活きている……」と感じながら、在宅療養の準備がスタート!
「すい臓がん」で余命3ヶ月を宣告された父。すでにがんは広がり、主要な血管や神経に浸潤しているため、大きな手術は難しい。年齢的に手術や化学療法は体の負担になることから、「何もしない」という選択肢もある。そんな医師の言葉を聞き、父は「抗がん剤治療はせず、住み慣れた家で、このまま穏やかな時間を過ごす」という道を選びます。 当初、その考えを受け入れられなかった私は、何とか治療を受けてもらおうと説得を試みますが、父の気持ちが変わることはなく……。もどかしい想いと焦り、不安な気持ちに押しつぶされそうになりながら、気が付けば「すい臓がん 治る 奇跡」といったワードでネット検索。「がんが治る水」「がんが消えるサプリメント」など科学的根拠のない情報も目にし、本気で購入を考えてしまうほどでした。 しかし身近な家族や友人、父がこれまでお世話になっていた総合病院の「緩和ケア認定看護師」(※1)らの支えにより、ようやく父に寄り添う決意が固まります。「残された時間が、あとどれぐらいなのかは分からない。でも後悔のないように一日一日を大事にしよう」と決め、前を向いて歩けるようになりました。 (※1)日本看護協会の認定を受け、緩和ケア分野における熟練した看護技術と知識を持つ看護師。 看護師として5年以上の実務経験と、認定看護分野における3年以上の経験が必要。 気持ちを切り替えて改めて気付いたのは、「やるべきことがたくさんある」ということ。さっそく翌日から、父が在宅で療養するための準備を始めます。優先したのは、「介護保険サービスの利用申請」と「(在宅療養がしやすいように)自宅の環境を整える」ことでした。 このとき私は、「お義母さんの介護をしてきて良かった」と実感します。介護サービスの手続きはもちろん、介護用品を選ぶにしても、お義母さんのところにあったカタログを目にしていたことで、スムーズに進めることができた。「これまでの経験が活きている……」と感じた瞬間でした。