フォルクスワーゲン・トゥアレグ 詳細データテスト 実直な大型SUV PHEVの経済性はそこそこ
はじめに
フォルクスワーゲン・トゥアレグは、独特なフルサイズSUVだ。現行モデルで3世代を数えるが、メルセデスがSクラスを、アウディがA8をそう位置付けてきたように、新技術のテストベッドという役割を担わされてきた。 【写真】写真で見るフォルクスワーゲン・トゥアレグとライバル (16枚) にもかかわらず、はたまた仰々しいエンジンを積んでさえというべきか、かなりつつましく、控えめで、実用本位なクルマという印象だ。メカニズム的にはポルシェ・カイエンやアウディQ7の親類だが、キャラクターはランドローバー・ディスカバリーや旧型のボルボXC90の仲間といったところか。 絶頂期には年間10万台近くがスロバキアのブラスチラヴァ工場から送り出され、ディーゼルだけでもV6からV10、ガソリンではW12まで選べたトゥアレグ。2006年にはボーイング747を牽引するというデモンストレーションを行ったが、その機械的な要素や、なにができるか、どこを走れるか、どのように使えるかという、現実的な部分に魅力の源泉があるクルマで、見栄えや高級感に心くすぐられるプレミアム系やファッション系のSUVとは一線を画する存在だった。 いまやMQBベースでアメリカ生産の安価なアトラスという弟分が登場し、トゥアレグの立場は小さくなったかに見える。しかし、戦略的な重要性はいまだ衰えていない。また、成長分野もまだある。今回テストするeハイブリッド仕様は、そこに当てはまるだろう。 トゥアレグのPHEVは、2021年に追加された最上位モデルのRが最初。2023年のマイナーチェンジでは、第2のPHEVである今回のeハイブリッド・エレガンスが登場した。Rよりは安価で、ディーゼルに代わるハイブリッドを欲するユーザーにも多少は手が届きやすいと思わせてくれる仕様だ。
意匠と技術 ★★★★★★★☆☆☆
2023年にはフェイスリフトで前後とも外観が変更され、最新世代のマトリックスLEDヘッドライトであるIQライトHDを採用する最初のフォルクスワーゲンとなった。英国仕様はこれが標準装備で、見た目にやや華やかさが増している。ライトの下には、左右いっぱいにLEDライトバーが走る、拡幅されたグリルが張り出した。 リアもライトを刷新し、LEDライトバーを追加。上級機種では、VWバッジまで赤く光るようにもできるが、その有無は好みで選べる。 アルミとスティールのボディワークの下には、やはり多種の金属を用いたモノコックシャシーが。フォルクスワーゲングループで広く用いる、MLBエボプラットフォームのバリエーションだ。エンジンはフロント縦置きで、いずれも3.0LターボV6。その背後にトルクコンバーター式の8速ATが続き、ハイブリッド車はそれらの間にモーターが挟まる。フルタイム4WDで、センターデフはトルセン式だ。 英国で販売されるICEモデルは、ディーゼルが231psと286psのV6TDI、ガソリンが340psのV6TSIで、ガソリン車のほうが高額な仕様。381psのeハイブリッドは、価格的にはディーゼル2台の間に位置し、最上位には462psのeハイブリッドRが君臨する。 ちょっと奇妙な価格設定に思えるかもしれないが、これには装備内容が影響している。ICEモデルはブラックエディション仕様で、eハイブリッドRと同じくアダプティブダンパーとセルフレベリング式エアスプリングを標準採用し、4WSも選べる。いっぽうのeハイブリッド・エレガンスは、車高固定のスティールコイルとパッシブダンパーで、エアサスペンションはオプション設定だ。 おそらくこれは、車両重量を抑えることで、よりよい電費データをスペック表に掲載するのが狙いだろう。それでも、燃費や低エミッションが、競合勢に比べてめざましく秀でているというわけではない。 実測した車両重量は2446kgで、前後重量配分は52:48。V6PHEVのフルサイズSUVとしては立派な数字だが、実用14.3kWhというバッテリー容量は、このクラスとしてはかなり小さいほうだ。