BitMEX、創業10周年──市場は今でも無期限スワップの発明を評価
「優れた芸術家は模倣し、偉大な芸術家は盗む」とは、アップル(Apple)創業者のスティーブ・ジョブズ氏が、同社がゼロックス社の技術を模倣したことを弁明するために好んで使ったフレーズだ。 そして今はWeb3時代。2022年後半にCEOに就任したBitMEXのステファン・ルッツ氏は、暗号資産デリバティブ市場を支える金融商品、パーペチュアルスワップ(無期限先物)という同社の発明をライバルが模倣しても構わないと述べた。より多くのトレーダーがこのツールにアクセスすれば、市場がより健全になるからだ。 ルッツ氏はCoinDeskのインタビューで、「オープンソースのノウハウだから、みんなにコピーされた。世界中がそれを使っているのだから、結局は最高の賛辞のようなものだ」と語った。 特定の日に特定の価格で資産を売買する契約である先物とは異なり、パーペチュアルスワップは有効期限をなくし、マージン取引の感覚に似ている。 パーペチュアルスワップは、ファンディングレート(資金調達率)、つまりロングポジションとショートポジションの間でやり取りされる支払いを使って、原資産との価格調整を維持する一連の短期先物契約として機能する。 ルッツ氏は、初期の暗号資産市場でのデリバティブ構築における根本的な課題に対処したという点で、パーペチュアルスワップは暗号資産取引における画期的なイノベーションであったとして、次のように語った。 「カウンターパーティのクレジットリスクに直面していたし、ロングとショートを引き合わせる本当の仕組みがなかった。資金調達メカニズムと保険ファンドを背景にしたパーペチュアルスワップは、(先物)取引業界全体の火付け役となった」 さらにパーペチュアルスワップは、トレーダーが暗号資産の世界で求められるような超高速で反応することを可能にした。 フランクフルト証券取引所を運営するドイツ取引所で働いた経歴を持つルッツ氏は「伝統的金融(TradFi)のサイクルが7年(一部の投資家はこのパターンで市場が動くと考えている)だとすると、暗号資産では6カ月だ。新しい動きに素早く反応する必要がある」と語った。 ビットメックスはもはや、取引高で最大のデリバティブ取引所には遠く及ばない。バイナンス(Binance)のような大規模な中央集権型取引所がパーペチュアルスワップを採用し、デリバティブビジネスに参入したためだ。それでもビットメックスは、忠実な顧客を抱えている。 その理由のひとつは、ビットメックスが独自のマーケットメイキングデスクを持っていないからだ。ルッツ氏によれば、ビットメックスは自社の顧客に相対するような取引をすることはない。 「公平性を保つために重要な、完全に独立した価格発見を保証しているため、当社の資金調達レートはときとして異なることがある。それは中立性の問題だ」とルッツ氏。 ボラティリティの高い時期、特に市場の低迷期には、ビットメックスの市場シェアはしばしば急上昇し、時には2倍になることもある。ルッツ氏によればそれは、ビットメックスが抱える忠実なデリバティブトレーダー顧客たちのおかげだ。