旭化成が腎疾患薬で「1700億円買収」 住友化学や三菱ケミカルグループが「頭痛の種」の医薬品事業で大勝負
■過去最大の買収案件では巨額減損 もっとも、思惑どおりにいくかはわからない。旭化成は2015年に2600億円で買収したアメリカのセパレーターメーカー・ポリポア社について、2022年度に約1850億円の減損を計上している。旭化成における過去最大の買収案件がポリポア社だった。 ポリポア社は「乾式」、今回の投資は「湿式」とセパレーターのタイプが異なる。従来、セパレーター事業として乾式と湿式を一体で運営していたが、湿式の拡大を受けて、それぞれ独立事業と位置付けたことでポリポアを減損することとなった。「湿式が有望だから減損を強いられた」といえなくもないが、ポリポアが買収時の計画を下回っていたのは事実だ。
カナダ工場については、北米でのEV普及が進むか、中国製品の流入が少ない状況が続くか、など先行きの不安がある。積極投資が想定どおり収益に貢献するか見通せない。 総合化学メーカーに対する株式市場の評価は低い。6月18日時点で大手5社の株価純資産倍率(PBR)を見ると、レゾナック・ホールディングスのほかは1倍割れ。旭化成も0.76倍しかない。 背景にあるのは石化事業の収益低迷だ。今後のカーボンニュートラル対応への懸念もある。生産能力過剰と言われて久しいエチレンのプラント再編を見てもわかるように、石化事業のリストラは数年単位の時間を要する。
それはそれで取り込むとともに成長事業を育成していく必要がある。各社ともヘルスケアや半導体、電池など成長領域の育成に注力しているが、果敢なリスクテイクでは頭一つ抜けている旭化成。これらの投資が実を結べば、低PBR群から脱却できるはずだ。
山田 雄大 :東洋経済 コラムニスト