“絶好調男”巨人・中畑清氏を震え上がらせた江夏豊氏のひと言とは!? 「ファンの思いがひとつになった」現役最後の日の日本シリーズ代打ホームラン
速すぎて思わず逃げた!江川卓氏のけん制球
徳光: 江川さんはどうでしたか。 中畑: 江川は怪物ですよ。無二の存在でしょう。投げ方がもともと違うんだから。 徳光: どういうことですか。 中畑: 江川はボールを滑らせるだけ。ボールを強く投げるには、「ボールを長く持って、最後のリリースの瞬間、指先でボールを切るように投げろ」って教えるわけじゃないですか。(江川)卓は違うんです。トップスピンをかけて、そのまんまで投げる。指先で切らない。だから、あいつのボールは落ちないんですよ。 徳光: 江川さんのようなピッチャーは、ほかに見たことないですか。 中畑: ほかにあの投げ方をできるやつはいないって。一番存在感のあるピッチャーは、僕の中ではやっぱり江川卓ですね。 徳光: ピッチャーゴロを捕って一塁への送球とか、けん制球とかはどうでしたか。 中畑: 徳さん、よく聞いてくれました! あのけん制球で僕は死ぬかと思いました。 徳光: どういうことですか。 中畑: 札幌円山球場。普段は、山なりのけん制しかしないやつが、ホームベースに投げるよりも速いボールで俺にけん制球を投げやがって…。こっちは用意してませんよ。ハッと見た瞬間に目の前にボールがあった。思わずウオーッて逃げたの。 徳光: えっ。で、どうしたの。 中畑: それでベンチに帰ったら、藤田さんから、「ピッチャーのけん制球をよけて逃げるやつがどこにいるんだ!」って。 徳光: (笑)。
現役最後の日本シリーズで代打ホームラン
1989年、中畑氏は14年の現役生活に別れを告げた。この年、巨人は日本シリーズで近鉄と対戦し、3連敗後の4連勝で8年ぶりの日本一に輝いた。中畑氏は第7戦に代打で登場、現役最後の試合で“引退の花道”となる代打ホームランを放った。 徳光: この年はサードに復帰しましたよね。 中畑: 最後の年ね。辰ちゃん(原氏)もあんまり状態がよくなかったんで、藤田さんが俺の勢いに懸けたと思うの。シーズン最初に起用してチームを乗っけてくれればいいと。でも、いかんせんね、もうファーストまでボールが届かなかった。 徳光: えっ、そうなの。 中畑: 一生懸命投げても、(ファーストの)駒田(徳広)にショートバウンドぐらい。クロスプレーだったら全部セカンドに投げてた。そのぐらい変わってましたよ、もう最後の年は。 徳光: それだけ “勤続疲労”してたってことなんですかね。 中畑: かもしれないですね。 でも、サードで終わることができたっていうのは、僕にとっては人生の最高の流れ。野球人として幸せな流れを演出してもらいましたね。藤田さんには、ほんとに気を遣ってもらいましたよ。 徳光: 最も記憶に鮮明に残ってるのは、やっぱり近鉄との日本シリーズですよ。 中畑: それも、シノとの関連があってね、(第7戦の)試合前に篠塚が藤田さんに直訴してたのね。「今日、必ず勝ち試合にしますから、中畑さんをどこかで使ってください」ってね。 (代打ホームランは)今までの中畑ファンというか、「あいつに打たせてやってくれよ」っていう皆さんの気持ちが一つになったパワーだと思う。俺は練習でもホームランは打てなかったんだから。スタンドなんか入んないもん。全然打てなかった。 徳光: でも、左中間へのすごいホームランでしたよね。 中畑: ええ、ライナーですよ。神がかりですよ。
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