【プロ1年目物語】史上最高の遊撃守備、新人最多56盗塁…無名のドラフト5位小坂誠の歴史的快進撃!
攻守走でハツラツとプレー
4月5日開幕の日本ハム戦、「二番・遊撃」でスタメン出場した小坂は決勝打を含む3打数3安打2打点の大活躍。新人史上9人目の開幕戦猛打賞デビューとなった。さらに開幕から8試合で打率.519、3盗塁という凄まじい活躍に早くも週ベ1997年4月28日号で独占インタビューが掲載される。 「(理想の選手像は)打者では、福本豊さん。できれば、単打だけじゃなくて、長打も打てるような選手になりたいですから。福本さんのようにはいかないですけどね。尊敬する人ですし、憧れの人でもあります。他には松本匡史さんにも、憧れてました」 セ・パの歴代盗塁王の名前を口にする小坂だったが、「イチローの4年連続首位打者は僕が止める!」なんてことは……と質問を投げかけられても、「(真面目に)イチローくんは“雲の上の人”ですから」と流すポーカーフェイスのルーキーであった。打率4割超えで開幕から13試合守り通した首位打者の座は4月20日に明け渡すも、打率.352で4月度月間MVPに選出。「本当に僕なんですか、僕でいいんですか、どうして僕なんですか?」と初々しいコメントを残したプロ1年生に引っ張れるようにチームも5月1日に単独首位に躍り出る。ロッテにとって5月の首位は14年ぶりの快挙だった。一番打者の諸積兼司は週べの直撃に、「僕が好調な理由はやっぱり(二番に)小坂かいるから。僕が出なくても、彼が出てくれる。そんな安心感があって、リラックスして打席に入ることができるんです」と相棒の背番号00の働きに感謝を口にした。 JR東日本東北出身のルーキーの快進撃に限定500枚の特製オレンジカード(JR全線で使えるプリペイドカード)が発売され、5月13日の地元・仙台での日本ハム戦で先行発売された。週べ97年6月9日号では人気コーナー「谷村志穂の野球に逢った日」のゲストで登場。日記を付ける意外な一面を語り、「社会人の時は僕くらいの身長の人は結構いたんで、違和感なかったんですけど。いざプロの世界に飛び込んでみると、みんなこう見上げる人たちばっかりだったんで」と戸惑う新人の顔を見せた。5月26日現在で打率.279と開幕直後の勢いはなくなるも、併殺はなく13盗塁。球界屈指の広大な守備範囲に加え、送球の速さと正確性を誇る遊撃守備は“小坂ゾーン”と称された。アマ時代から小坂を知る宮本慎也(ヤクルト)は、のちに週べの遊撃手論インタビューで、歴代ショートの守備について「いい選手はたくさんいましたが、小坂よりすごいのはいなかった」と証言している。