D2Cの現在地 ワービーパーカーとナイキの場合【鈴木敏仁USリポート】
3月に発表された第3四半期決算によると、EC売上高が対前年比で3%減だった。これは2015年以来初めてなのだという。ナイキ・コムによるデジタル収益を本体から切り離して公開したのが15年だそうなので、“公となっている業績上初のマイナス成長“ということになる。
同社は17年にConsumer Direct Offense Strategyという名称で直販強化に舵を切って、ホールセールチャネルを絞り、ナイキストアとナイキ・コムに注力する戦略にシフトした。EC市場がコンスタントに成長していた時期なのと、D2Cに注目が集まってトレンドとなっていたこともあって、とりわけEC強化に傾いた。
これが裏目に出て、ホールセールを戻す戦略へとシフト、いったん弱めた大手シューズ専門店・フットロッカーとの関係を最強化すると発表したのが昨年の3月である。リアル環境での商品露出を再び増やす方向へと向かうことで建て直そうとしているのだ。
あるべき姿は、EC、ホールセール、直営店舗の3つがそれぞれポジティブに影響を与え合って、全体が伸びていくことなのだが、ナイキのような大企業でも3つのチャネルの最適化は容易ではない。
規模が小さいレベルでとどまるならば話は別だが、大きな企業や、これから一定規模を超えようという企業にとっては、直営店舗であれホールセールであれ、商品やブランドのリアルな露出が必要なのだということが、試行錯誤の中ではっきりと分かってきた。