D2Cの現在地 ワービーパーカーとナイキの場合【鈴木敏仁USリポート】
今や大手専門店チェーンに変貌
D2Cブランドとして創業したが、リアル直営店舗強化へと戦略をシフトしているのがメガネのワービーパーカーだ。2013年に1号店をオープンし、23年度末(12月末)の時点で237店舗まで増えている。昨年の新店数は37店舗、今年は40店舗を計画している。
売上高ベースではリアル店舗がすでに60%を占めているので、数値上はすでにD2Cブランドではなくリアルな専門店チェーンである。
このリアル店舗強化戦略は今後も継続し、現時点で900店舗を視野に入れているとしている。これから4倍近くまで店舗を増せると言っているのだ。
何度か書いているが、D2Cというビジネスモデルはスタートアップにとっては便利だが、一定規模になると、他のリアル企業に商品を卸すホールセールと、自ら運営する直営店舗と、チャネルを増やす必要性に迫られる。理由の一つが広告コストだ。知名度を上げる、新規ユーザーを獲得するまたは維持するといった目的による高い広告コストがD2Cモデルにはつきまとう。これを軽減するために、リアルで消費者の目に付く場所に商品を露出する必要が出てくる。
新しい商圏に店舗をオープンするとその商圏のネット売上が3倍に増えると同社は言っていて、広告支出の軽減だけではなく、売上増という相乗効果もあるというわけだ。
またスマホなどを利用した人流分析を専門としている調査企業Placer.aiによると、ワービーパーカーの12月の来店客数は対前年比で40%も増えたという。また来店客の世帯収入の中央値が、全体では上がっているが、店舗では下がっており、このことは同社の対象市場が広がっていることを意味していると結論づけている。
チェーン店舗の運営能力があることが大前提だが、このようにリアル店舗はD2Cにポジティブな影響を及ぼすということが分かってきた。
EC、ホールセール、直営店がポジティブに影響しあう
EC、ホールセール、直営店舗のバランスを崩したのがナイキである。