焼き肉店の倒産“過去最多” 日本人の「牛肉離れ」進む 背景には『A5ランク』量産で『手ごろな国産牛』減少
■畜産農家を取材 餌代が高騰
「牛肉値上がり」の原因を探るため、畜産農家を取材すると、そこにはある異変があった。 滋賀県近江八幡市にある畜産農家「亀井牧場グループ」。牛舎には優雅な音楽が流れている。 亀井牧場グループ 亀井頌司さん:クラシック的な。リラックスさせてあげるためにできることは何でもしていこうかと。 亀井牧場グループではおよそ1800頭の近江牛を飼っている。 亀井牧場グループ 亀井頌司さん:いい牛は寝るときも、堂々と寝るので。 うまみや甘みのある牛肉にするため、地元・近江米のわらや、ビールかすを餌に混ぜているが、欠かせないのがとうもろこしなどの配合飼料だ。しかし…。 亀井牧場グループ 亀井頌司さん:ウクライナ戦争、円安重なったじゃないですか。月のエサ代、配合飼料代だけでも、月ベースで1000万円ぐらい(上がってる)。 海外からの輸入に頼っている飼料が、円安などで高騰。 さらに肉のランクをめぐる“ある”変化も畜産農家に打撃を与えている。
■“最上級”A5ランク量産で希少価値が薄れ 農家は「赤字でお肉に」
亀井牧場グループ 亀井頌司さん:すごい技術でA5ランクを作るっていう時代から、もうしっかり健康にしたらA5ランクができちゃう時代になってしまったので。A5ランクは非常に多いです。 一般的に和牛でサシがきれいに入った“最上級”とされるA5ランク。 30年前は、全ての和牛のなかで10%未満だったが…、今はおよそ45%がA5ランクに。希少価値が薄れてしまい価格が徐々に低下しているのだ。 亀井牧場グループ 亀井頌司さん:(A5ランクが)今、非常に安いんでね。コストが上がっているだけなんで、肉の値段なんて上がってないんで。だからもう全国の農家さんも牛飼ってる人も、赤字でお肉にしてるんですよ。ほんまに厳しいのは厳しいですよね。 実は、A5ランクなどの高級和牛の増加が、手ごろな国産牛(交雑牛)の価格高騰にもつながっていると専門家は話す。 広島大学大学院 統合生命科学研究科 長命洋佑准教授:黒毛和牛を作ることが多くなっていって、交雑種(お手頃な国産牛)とか、昔作ってたものが減っていってる。交雑種の脂身がちょっと少ない部分の方が好まれてるので、そっち側が注目されて(値段が上がる)というのも背景としてはあるかな。