発達障害の子が正解しづらい「サリー・アン課題」とは? 他人の心を理解しにくい理由
発達障害の子ども達は、定型発達の子に合わせて生活することを求められがちです。本人の成長をサポートするうえで、発達障害の人どういった特性があるのかを理解することが必要となります。 【画像】「サリー・アン課題」を図で見る 書籍『発達障害の子が18歳になるまでにしておくこと』では、当事者と周囲の相互理解が大切だと伝えつつ、発達障害の人の正答しづらい「サリー・アン課題」を紹介しながらその傾向を伝えています。本記事ではその一部を紹介します。 ※本稿は、 宮尾益知著『発達障害の子が18歳になるまでにしておくこと』(大和出版)から一部抜粋・編集したものです。
言語獲得以前にできる親子間の身体的な交流が身につきにくい
アタッチメントは心理学で用いられる用語で「愛着」とも呼ばれます。 アタッチメントとはくっつくという意味ですが、たんにスキンシップではありません。身体的接触と情緒的接触の両方の交流により得られます。
親子間のアタッチメントが人間関係の基盤
アタッチメントの形成は、赤ちゃんが言語を習得する以前から、親など養育者との身体的・情緒的コミュニケーションによって育まれ、3歳頃までに身につきます。赤ちゃんは不安を感じると、だれかにくっついて安心しようとします。 最初はだれでも構いませんが、やがて、世話をしてくれる母親などの養育者を認識し、「自分を守ってくれる人」として頼るようになります。これがアタッチメントです。養育者にくっついて不快や不安をとり除いてもらうたびに、アタッチメントは強化されます。「この人は信用できる」「自分は愛されるべき人間だ」と思えるようになり、情緒が安定します。
親への愛着から「自分」が生まれる
子どもは親との関係を通じて「自分」を意識するようになります。 生後6か月頃から親子が同じものを見て世界を共有する「共同注視」ができるようになり、9か月頃には同じものを見ながら情動を共有する「共同注意」や「ミラーリング」ができるようになります。(図右) また、親の表情や反応を見ながら「危険かどうか」を察知して自分の行動を判断する「社会的参照」もできるようになります(図左)。 アタッチメントが形成されると子どもは親を安全地帯と認識し、安心して社会に踏み出していくことができます。 親子の相互関係は心にとり込まれ、社会を認識する際の原型となります。子どもはこの原型をベースに他者の行動を予測したり、自分の行動を計画したりして対人関係を築きます。 一方、発達障害やギフテッドの子は、定型発達の子とは異なる発達段階を経ます。とくにアタッチメント形成は遅れ、形成できても未熟なままで学校生活を送らなければならず、社会性が育まれません。個別の発達状況をよく見て、まわりがサポートする必要があります。