【バイデン撤退の予測的中!】神聖化するトランプに、ハリスはどう対抗するのか?
「新しいトランプ」は失敗
トランプ前大統領は、共和党大統領候補受諾演説の冒頭、約20分を費やして、暗殺未遂事件について、トーンを抑えながら自らの口で物語り風に語った。ストーリーテリング(物語りを語る)という手法を用いて、MAGAを自分に引き付け、無党派層まで支持層を拡大するという狙いが透けて見えた。 つまり、トランプ前大統領は約20分かけて、暗殺未遂事件を機に「生まれ変わったトランプ」を演出したのだ。 約90分に及ぶ共和党大統領候補受諾演説では、トランプ前大統領は「バイデン」という言葉を1回使用したのみであった。しかもその1回は、原稿になかったにもかかわらず、思わず「バイデン」と口を滑らせてしまい、「二度と言わない」と語ったほどである。 トランプ前大統領が、このバイデン大統領の名を発することを封印したことは、穏健なイメージを出して、「団結」を求めるのに必要なことであったからだ。 受諾演説でトランプ陣営は、暗殺未遂事件により「新しいトランプ」を打ち出し、無党派層を獲得する絶好の機会を与えられたとみていたようだ。 しかし、この演出は見事に失敗した。トランプ前大統領は、演説の後半でナンシー・ペロシ前下院議長を「クレージー」と呼び、「10人の(過去の)ひどい大統領を合わせても、バイデンの方がひどい」と強調し、「いつものトランプ」に戻ってしまったのだ。 受諾演説を聞いた米アトランティック誌のマッケイ・コピンズ氏は、「新しいトランプは、常に古いトランプであった」と評した。
「神聖化」という選挙戦略
トランプ大統領は、共和党大統領候補受諾演説で、「神が味方してくれた」と述べた。この言葉には隠されたメッセージがある。 まず、トランプ前大統領は「神が自分を守ってくれた」というメッセージを発信している。それを受けた支持者たちの中には、神によって守られている人間は清浄で汚れていないと理解する者もいる。 現在トランプ氏が抱えている重罪犯や米連邦議会議事堂襲撃事件を煽った犯人というイメージは、この解釈によって消される。加えて、「神によって守られている自分は、清浄で汚れていないので、免責特権も得た」と主張できる。 率直に言ってしまえば、暗殺未遂事件を利用して、いわゆる「神聖化」という選挙戦略を用いたのだ。事実が歪められ、司法制度が弱体化する点において、極めて危険な戦略であることを強調しておきたい。