「性被害に服装は関係ない」当時の服を再現した話題の展示、再び開催
12日から「女性に対する暴力をなくす運動」期間が始まる。 あなたは悪くない、何を着ていたかは関係ない――。「挑発的な服装をした若い女性が性暴力被害に遭う」という先入観をなくそうと、「そのとき、あなたは、何を着てた?~What Were You Wearing?~」展が男女共同参画センター横浜(横浜市戸塚区)で開かれている。4日まで。 【写真】取材に応じた男女共同参画センター横浜の白藤香織さん(左)と、金子順子さん=2024年11月1日午前11時47分、横浜市戸塚区上倉田町、良永うめか撮影 同センターの一角には、青のニットにジーンズや、紺のセーラー服などが並ぶ。性被害に遭った時の服装を、体験した8人の証言をもとに古着で再現したものだ。 当事者の同意のもと、そばには当時の状況や思いがつづられている。 白のブラウスは、ある女性が肉親からレイプされた時のものだ。添えられた説明書きには「被害の10年後に、忘れようとしていた記憶がよみがえってしまった時からショックが大きくなっていった」とある。痴漢、セクハラといった性被害による怒りや苦しみを訴えている。 同展は、米国の倫理学者、メリー・シマリングさんがレイプ被害に遭ったことを書いた詩「私が着ていたもの(What I Was Wearing)」から着想を得て、同国のアーカンソー大の研究者らが2014年に開催したアート展から始まった。米国内のみならず、ヨーロッパなどでも開かれてきた。 昨年、日本でも初めて上智大で開催された。企画者の一人で同大の田中雅子教授(国際協力、ジェンダー論)は「服装に対する指摘は、被害が本人のせいにされがちだということの象徴だ」と語る。 田中教授によると、ハラスメントの研修などで「露出の多い服装をやめましょう」と講師が助言することがいまだにあるという。そうした言葉は、実際に性被害に遭ったとき、「自分が悪かった」と思ってしまうことにつながり「誰にも相談できない状況を作っている」と田中教授は指摘する。 同大での展示は遠方からも反響があったため、展示に使った服や説明書きなどの貸し出しを決めた。 その案内を見て手を挙げたのが、男女共同参画センター横浜だ。同センターには、DVや性的な被害などによる相談が寄せられるという。 同センターの白藤香織館長(55)は「性被害に遭った人を、夜道を歩いていたからでは? 肌を露出する服を着ていたからでは? と非難する風潮がある」と説明する。「どんな対策をしても被害に遭ってしまうことはある。責めるのはおかしいと伝えたい」 同センターでの展示を担当した金子順子さん(51)は「展示は胸に迫ってくるものがあり、小さい会場だが、圧倒されると思う。共感し、考えることにつながってほしい」と話していた。 展示は同センター2階の「生活工房」で。午前9時から午後5時(4日は午後4時)まで入場可。無料。同展は今後、東京や埼玉でも開かれる予定。詳細は(https://www.facebook.com/16days2014/)で確認できる。(良永うめか)
朝日新聞社