「ヘルスリテラシー」の重要性―納得する治療を受けるため 患者に必要なこととは
◇ファイザー・メディカル部門執行役員 藤井幸一さんに聞く
病気になったら誰しも、よりよい治療を納得したうえで受けたいと願うだろう。では、「納得する治療」とは何か、日進月歩の医療界で日々生み出される新しい薬は自分に使えるのか――。あふれる情報の洪水から自分に合った適切な情報を探し出すために、今注目されているスキルが「ヘルスリテラシー」だ。ファイザー・メディカル部門執行役員で、医師でもある藤井幸一さんに、ヘルスリテラシーの意義、その重要性などについて聞いた。
◇患者にとって難しい「治療選択の判断」
――ヘルスリテラシーは、なぜ重要なのでしょうか。 病気になった患者さんがどのような治療を受けるかを決める際に重要なのは、医師がさまざまな選択肢を示し、患者さんが今の生活や仕事、自分の人生を考慮し、医師と患者さん双方がお互いの考えをきちんと述べたうえで、正しい情報に基づいて判断・合意できることです。 とはいっても、それは実際には難しいというのが一番の課題です。 診療では常々、患者さんにできるだけ分かりやすく説明するよう心がけてはいても、病気や治療方法、薬の話は難しいことも多く、医師と患者さんのコミュニケーションを、もう少し改善する方法があればよいと感じていました。 病気の治療をするときに医師が目指すのは、病気を治すことやしっかりとコントロールすること、薬の効果の確認や副作用への対策を行いながら、3年後、5年後、10年後、15年後……長期にわたっていかによい状態を保つかということです。 ファイザーは「患者さんの生活を大きく変えるブレークスルーを生みだす」という企業目的を掲げています。医師と患者さんの間で十分なコミュニケーションが行われ、理解が進まなければ、私たちが企業として掲げている目標も実現できません。どれだけよい薬をつくっても、最適な患者さんに適切に使われないと薬本来の有効性や安全性が得られません。患者さんは一人ひとり背景も年齢も生活も違うため、医師と患者さんがよく話し合い、納得した治療法を選ぶ必要があると思うのです。 ヘルスリテラシーは、患者さんが自分にとって最善の治療を選ぶための力になります。