「いっそ高市新党を」の声に石破総理の「青い鳥は外にはいない」の見解
「火事とけんかは江戸の華」という言葉から分かるように、多くの人にとって他人のけんかは一種の見世物である。国家間のけんかで犠牲者が出ているとなると話は別だが、政治家同士のもめ事くらいならば一種のエンターテインメントにもなりうる。だから政局記事は根強い人気を誇るのである。 【写真を見る】「距離、近っ!」 仲よさげにヒソヒソと話し込む…高市早苗と麻生太郎 麻生氏から助言? 自民党総裁選で石破茂氏に惜敗した高市早苗氏を巡っては、応援団はもちろんメディアも「けんか」を期待しているようだ。「週刊ポスト」10月18・25日号は「『高市新党』の乱 自民大分裂へ!」と大きな見出しを打ち、3ページにわたり高市氏が倒閣運動に動く可能性をレポートしている。同記事では日本保守党からの立候補を表明している河村たかし氏が高市氏へのラブコールを口にして、共闘を求めている。 ポストや公認問題で冷遇された旧安倍派の議員らが高市氏と共に動くのではないか、あるいは動くと面白い、といった見立てを口にする識者もいるようだ。
時代の変化を感じさせるのは、この種の「分裂」「新党」といった意見、これまでは高市氏ではなく石破氏に寄せられるのが常だったということだろう。第4次安倍内閣以降、本人はもちろん周囲も徹底的に干されていた石破氏は「いっそ新党を作ればいいじゃないか」と言われることが多かった。あるいは野党と合流することを期待する声もあった。 しかし、本人は一貫してそうした可能性を否定してきた。どれだけ冷や飯を食わされても自民党から離れようとは考えていなかったようだ。 それはなぜか。石破氏は自身の過去を振り返りつつ「青い鳥は外にはいない」と述べている。 著書『異論正論』をもとに見てみよう(以下、同書から抜粋・再構成しました) ***
文句があるなら出て行けという人
あちこちで自分の考えを述べていると、さまざまな声をいただきます。ネット配信された際に寄せられるコメントにはなるべく目を通すようにしています。 その中で多いのは次の二つでしょうか。 「いっそ新党を作ればいいじゃないか」 「そんなに文句があるのなら自民党を出て行け。足を引っ張るな」 前者には期待を込めて書いてくださる方もいらっしゃるのでしょうが、後者については長い間、寄せられてきた批判です。 私は政治家になってから一貫して「自分が正しいと思うことを自由に述べられなければ、政治家になった意味がない」と考えています。また、自民党は多様な意見により強さを増す──言い換えれば国民の支持を得る──政党だと思っています。ですから、異論に対して「足を引っ張るな」というのは的外れですし、そのような言説はむしろ「ひいきの引き倒し」になり、自民党を強くすることにはつながらないと思います。 「新党を作れ」という声については、一度党を出た経験があるからこそ、「青い鳥は外にいるわけではない」というのが実感です。少し昔話をさせてください。