リベロで春高制覇に貢献、セッターで挑んだ連覇は無念の"不戦敗" 荒木琢真が振り返る当時「試合ができるうれしさしか……」
関西で勝つことの難しさを教えてくれる存在
卒業後は「関西のチームで関東に勝つ」という強い意志を持って近大に進み、1年時からリベロとして経験を重ねてきた。その関西には、荒木に勝つことの難しさを教えてくれる存在がいた。中学高校のチームメートで、近大とは関西リーグや西日本インカレのタイトルを常に争い続けてきた天理大学の主将・楠本岳(4年、東山)だ。 「チームメートとしては心強いけど、敵になったら一番嫌。お互いの癖もわかっているし、天理は東山の選手も多いので、冗談で『俺もそっち(天理大)に交ざりたいわ』って言っていたこともあるんです(笑)。でもお互い、最後は東だけではなく西も勝てると証明したい。どんな相手にも戦える自信は、今までの中で一番あります」 最後の全日本インカレが始まる。あと一歩、壁を打ち破れなかった先輩たちや、ともに時間を過ごしてきた同期たちの思い。そしてこれからの近大を担っていく後輩のためにも「もうひと踏ん張りしたい」。荒木は笑顔の奥に闘志を燃やす。 「自分自身は今まで越えられなかった壁を打ち破りたいし、結果を出すことで後輩たちにもこれからにつながる自信をつけてほしい。この1年、全カレでのメダルを目指して頑張ってきたので、僕ら4年生を筆頭に、目標にたどり着けるように頑張りたいです」 4年前は閑散としていた夢の舞台で、今度は声援の後押しを受けながら、当たり前のようにバレーボールができる。そして最強の守護神は、どんな強打にもひるまず最後まで立ち向かう。自ら上げる1本が分厚い壁を突破する力になると信じて。
田中夕子