息を吐き切るのがポイント 慢性的な疲労が軽くなる「丹田呼吸」
「吸うときは鼻から」がいい理由
しっかり息を吐き切った後で、新たな空気を吸いましょう。丹田呼吸を効果的に実践するためには、「吸う息は鼻から」という基本を守ることが重要です。 鼻呼吸には、口呼吸にはない多くの利点があります。まず、鼻の内部には繊毛と呼ばれる細かな毛があり、これが空気中のほこりや微生物をフィルターのように取り除いてくれます。さらに、鼻の粘膜が空気を温め、湿度を調整するため、冷たい乾燥した空気が直接肺に入ることを防ぎます。 このように、鼻呼吸は呼吸器系の保護機能を果たすので、風邪や感染症の予防にも効果的です。 鼻からの吸気は、口から吸うよりもゆっくりとしたペースで体内に取り込まれるため、より副交感神経が優位になります。また、深い鼻呼吸は酸素の吸収効率を高めるだけでなく、体の中での酸素と二酸化炭素のバランスを整える役割も果たします。これにより、全身のエネルギー代謝が最適化され、健康効果も向上するのです。鼻呼吸を徹底することで、丹田呼吸の効果が最大限に発揮されます。 呼吸の質が向上することで、心身のバランスが整い、慢性的な疲労やストレスを解消する手助けとなります。とくに、鼻呼吸は深い睡眠を促進するため、睡眠の質が向上し、朝の目覚めがスッキリとする効果もあります。鼻から息を吸うことで、呼吸が自然と深くなり、体全体がリラックスできるのです。 和儀では、この鼻呼吸の重要性を強調しており、狂言の演者たちも日常的に鼻呼吸を実践しています。鼻から吸うことで得られるリラックス効果や酸素供給の効率化は、健康維持だけでなく、パフォーマンス向上にもつながります。 つまり、鼻からの吸気が持つ自然なリズムは、身体の内外の調和を取り戻す鍵であり、私たちの心身によい影響を与えるのです。
呼吸によるリラックス効果を実感
正しい丹田呼吸を実践することで、もっと言えば「ただ呼吸をするだけで」リラックス効果が生まれるのは、不思議に思えるかもしれません。しかし、深い呼吸は、私たちの自律神経系に直接的な影響を与えます。 とくに、「副交感神経を優位にすること」は、心と体を落ち着かせるためにとても重要な要素です。日常生活でのストレスを感じたときだって、丹田呼吸を意識的におこなうだけで、心拍数が下がり、血圧が安定し、全身の緊張が解けていくのです。和儀では、とくにこのリラックス効果を重視しています。 丹田呼吸は、深くゆっくりとした呼吸法で、息を吸うときにも、吐くときも下丹田を引き上げているものをいいます。この呼吸を通じて、身体の内側からリラックスすることは、健康にとっても大切です。 また、丹田呼吸は横隔膜を大きく動かすため、内臓が刺激される効果もあり、消化機能の改善や便秘の解消に役立ちます。呼吸を通じてリラックス効果が得られるのは、脳内でリラックスホルモンであるセロトニンの分泌が促されるからです。 セロトニンは感情を安定させ、幸福感をもたらす神経伝達物質であり、深い呼吸をおこなうことで自然と分泌量が増えます。これにより、気分が落ち着き、不安や緊張感が軽減されるのです。 和儀に限らず、深い呼吸は心と体を結びつけ、瞑想状態に近い集中力を高める効果があります。精神的なストレスが軽減されると同時に、注意力が向上するため、仕事や学習の効率もアップします。 そのため、ヨガやマインドフルネスなどにも、積極的に取り入れられています。みなさんが、和儀を通して丹田呼吸を習得することで、日常生活をより豊かに、より健康的に送れるようになるはずです。 呼吸はただの生理的な行為ではなく、心身の健康を支える重要な作用であることを再認識する必要があります。
茂山千三郎(狂言師)