旧車のCピラーに付けられたバッジやエンブレム、実はただの〝飾り〟じゃなかった件
今のクルマはキャビン後部のCピラーには何も付けていない車両が多いですが、旧車の時代は、バッジやエンブレムがついているクルマが多かったようです。じつはこのバッジやエンブレム、見た目のルックスを高めるドレスアップパーツではなく、機能的に「どうしても必要だった」ということをご存知でしょうか? 【画像】旧車のCピラーに付けられたバッジやエンブレム×11枚
ピラーに装着されたエンブレムやバッジの謎とは?
今のクルマはキャビン後部のCピラーには何も付けていない車両が多く、その部分はボディの一部としてプレーンな面を見せて、目線に近い高さのデザインの見せ場となっています。 それが、今からだいたい50年ぐらい遡った1970年代の旧車と呼ばれるクルマには、高確率でC(またはD)ピラーに、エンブレムやバッジ、ルーバーなどの装飾パーツが装着されていました。 あの部分は上記のようにボディの中で目線に近い部分なので、見せ場としてその車種のアイコンであるバッジやエンブレムなどを装着してアピールしているのだと思っていました。 しかし、あのパーツたちは、車種をアピールする以外に重要な役割が隠されていたのです。 今回はあのピラーに装着されたエンブレムやバッジの謎についてちょっとだけ掘り下げてみましょう。
「日産・フェアレディZ(S30)」のピラーをチェック
まずは旧車界のトップアイドルの1台、「日産フェアレディZ」から見ていきます。 1969年に発売されて、日本のみならず欧州や北米で大ヒットしたS30系のフェアレディZ。 ファストバック(ハッチバック)スタイルの流麗なスタイリングが人気の源ですが、サイドウインドウとリヤウインドウの間のCピラー部分には、どの年代、どのグレードにも丸いバッジが付いています。 ぱっと見は上記のような理由で、ただ目に付きやすいところに装着されたエンブレムだとしか見ていませんでした。 しかしあるときにS30のスクラップを見かけ、なんとなく見回していると、エンブレムが付いていた場所に、指が入るぐらいの穴が空いていることに気付きました。 「あれ、エンブレムを付けるだけなら両面テープで事足りるのでは?」ということに気付きます。 実際にリヤゲートに付くエンブレムは両面テープのみで装着されています。 あとで詳しい方に確認してみたところ、あれは“エアベント”用の穴だということが判明しました。 その穴は、室内の気密を外に逃がすための穴だったのです。 クルマのドアは、外からの水や砂埃、あるいは熱気や冷気などが不要に入ってこないようにするためにパッキンが装着されています。 そうは言っても空調の目的で外の空気を採り入れる部分があったり、配線やロッドなどを通すために完全には塞がっておらず、わずかに空気が出入りしています。 しかし、ドアやリヤハッチのような大きなパネルが閉まるときには、その面の空気が押されて室内の気圧が高まります。 その瞬間に室内の気圧が一瞬高まり、その影響で乗員の身体に影響を及ぼすことがあります。具体的には目や耳にダメージを与える可能性があるようです。 あのピラーの穴は、その気圧を逃がすために空けられているんです。 そのピラーの室内側を見てみると、その近くにエアを通すための樹脂製のグリルが装着されているのを発見できるでしょう。 そして装着状態のエンブレムをよく見ると、ただの円盤ではなく、周囲にエアを抜く穴が空いていることに気付きます。 ちなみにS30の最初期型では、リヤハッチの後端付近に横長の小さめなグリルが1対装着され、その見た目からマニアの間では「ヒゲ付き」と呼ばれていますが、あれも気密抜きのためのエアベントです。 そのピラーのエンブレムが1980年代以降のクルマにあまり装着されなくなったのは、車体設計が進んだおかげでエアベントの通路が他の場所(多くはリヤフェンダー付近)に移動したためです。