“新生”箱根駅伝は5区短縮で山の神が消える?! どの大学が有利に?
来年正月に行われる第93回箱根駅伝のチームエントリーが週末に行われるが、今レースから往路の小田原中継所の位置が変わり、5区の距離が23.2kmから20.8kmに短縮される(反対に4区が18.5kmから20.9kmに延長する)。箱根駅伝は“新たな戦い”を迎えることになるが、その戦略はどう変わるのだろうか。 山上りの5区が最長だった第82~93回大会まで全11回のレースを振り返ると、5区で区間賞を獲得したチームが10回も往路を制して、そのうち7校が総合優勝。「山の神」と呼ばれた順大・今井正人(現・トヨタ自動車九州)、東洋大・柏原竜二(現・富士通)、青学大・神野大地(現・コニカミノルタ)といった強烈なクライマーの出現で、箱根駅伝は完全に“5区勝負”のレースになった。今井は4分09秒差を、柏原は4分58秒差というビハインドをひとりでひっくり返している。4区までにひとり1分遅れても、5区の1区間で逆転できる計算だ。 「山の神」クラスの選手がいるチームは、序盤の出遅れをさほど気にする必要がなくなった半面、強力なクライマーがいないチームは、5区での遅れを考慮して、4区までに少しでもアドバンテージを奪う戦略がスタンダードになった。 しかし、5区が短縮することで、その影響力が低下。反対に4区が「1年生区間」ともいうべき負担の軽い区間から「準エース区間」になるなど、10区間トータルの戦いが顕著になる。 第82回大会(06年)で、「山の神」を擁すことなく亜細亜大を王者に輝かせた岡田正裕監督(現・拓殖大監督)も、「5区が短くなると、うちのような力がないところはやりやすいんじゃないですか。前回までは5区で箱根の勝負が決まるといっても過言ではなかった。でも、これからは他の区間の重要性が増すことになります。ひとりのエースではなく、好選手を10人揃えた方が強いと思いますね」と話している。 4・5区の距離変更で、区間配置のパワーバランスも大きく変化することになる。今回から5区以外の「役割」が少しずつUPする印象だ。特に2区、4区、7区、9区、10区の5区間は「勝負ポイント」になる可能性が高い。基本的な走力が高く、様々なキャラクター(持ち味)の選手をいかに揃えることができるのか。これまで以上に、「選手層の厚いチーム」が有利になるはずだ。 コースは一部違うものの、今回からの戦いは、第75回~第81回大会(99~05年)の距離設定とほぼ同じ。第78回~81回大会(02~05年)で4連覇を達成した駒大は、往路をトップが見える位置で折り返して、選手層の厚さで優位に立つ復路で逆転するというのが勝ちパターンだった(4連覇のうち3回が復路での逆転V)。今後は復路での逆転劇が増えるかもしれない。