プロだけが気づいていたこと…週刊文春トヨタ記事の「社外取締役」告白は、歴史を画する記事だった
この5年間でここまで変わった
令和元年(2009年)の段階で、私は著書『身捨つるほどの祖国はありや』(幻冬舎)でこう書いた。 《「私がいつも強調するのは、メディアの役割である。 ある会社で不祥事が起きたとき、メディアは真っ先に社長の首が飛ぶかどうかに関心を集中する。分からないではない。だが、せめてその10分の1でも社外取締役がどうしていたのかを取材して欲しいとお願いするのである。 『社外取締役の自宅へ夜討ち朝駆けし、その発言が一行でもメディアに出れば、全ての上場会社の社外取締役に緊張感が走るに違いない。』そういう私への反応は未だはかばかしくない。分かる。メディアは目の前の重大事である社長の進退を先ず追いかけなければならないのである。 だが、私は同じことをもう何年も言い続けている。》(もとのエッセイは『ビジネスローヤーズ』2019年9月号所収の「ローヤー進化論」) その効果があった! と快哉を叫びたくなったのが、今回の週刊文春の記事だった。 その前にも、私の意図をくみ取り、独立社外取締役に取材してくださったきわめて有力なメディアの方はあった。実名入りで報道もされた。しかし、その社外取締役の方のうちのおひと方は所属会社の広報部を通じての回答だった。独立社外取締役は個人として務めているポストであるにおもかかわらず、であるしかも、その回答は会社の言動をなぞっただけだった。もうひと方はもっと積極的な発言だった。しかし、実質的には同旨ということになるだろうと思われた。 実は、朝日新聞の藤田知也記者の署名入り記事にはこうあったのだ。 《朝日新聞は18年4月時点のかんぽ社外取8人に取材を申し込んだ。このうち遠藤信博氏が会長を務めるNECは『遠藤は法令順守の視点に立った提言を行っていた』(広報室)、アイスタイル取締役の山田ユメミ氏は『多くのお客様にご迷惑やご心配をかけた事を重く受け止めている』とコメントした。残る6人は取材応じなかった。》(2020年7月25日 朝日新聞(朝刊)) それだけに、私はこの5年間のコーポレートガバナンスをめぐる世論、社会情勢の変化を思わないではいられない。