[国スポ少年男子]想定外のアクシデントが続く中で増してきた一体感と粘り。広島県が埼玉県をPK戦で下し、2年連続でのベスト4入り
[9.23 国スポ少年男子準々決勝 広島県 1-1(PK3-1) 埼玉県 北部グラウンドA] 23日、「SAGA2024第78回国民スポーツ大会」サッカー競技少年男子の部準々決勝が行われ、鳥栖市の鳥栖スタジアム北部グラウンドAで広島県と埼玉県が対戦。両者譲らず1-1で前後半を終えた一戦は、PK戦を3-1で制した広島県が勝利した。 試合は開始早々に埼玉がスコアを動かした。右サイドの低い位置からDF中澤凜(大宮U18、1年)がゴール前にクロスを入れると、相手DFの弾いたボールにFWエドワード真秀(大宮U18、1年)が反応。冷静にゴールネットを揺らし、幸先の良いスタートを切った。 追い掛ける展開を強いられた広島だが、焦りの色は見られない。「失点が早すぎた分、開き直れた部分があった。もう少し遅い時間や前半終了間際に失点したら慌てていたかもしれない」と遠藤真仁監督(広島ユース)が振り返れば、DF森井莉人(広島ユース、1年)もこう続ける。「自分たちDFのミスで試合早々に失点したのですが、うちのFWなら決めてくれると思っていたので安心していました」。 U-16日本代表のMF神田泰斗(大宮U18、1年)を筆頭にタレントを多数揃える埼玉にボールを持たれるのは想定内。チームが発足した頃からハイプレスを徹底してきたが、この日は「前線のプレスがハマらない時はしっかりブロックを組んで、奪いきろうと意識していました」(森井)。DFの背後を狙われても、GK山田真叶(広島ユース、1年)が的確にカバーして、相手に2点目を与えない。 ボールハントからのカウンターで押し返した広島に最初の決定機が訪れたのは32分。左サイドの高い位置でボールを奪ったMF原湊士(広島ユース、1年)が、近くにいたFW信重亮二朗(広島ユース、1年)に預ける。すると、信重が豪快に振り抜いた右足シュートがゴールネットを揺らし、広島が試合を振り出しに戻した。 前日の2回戦でも2ゴールを奪ったエースの得点によって、広島は勢いづいた。「前半終了間際に追い付くことができて、みんなの雰囲気が良くなった。このまま行くぞ!という雰囲気のまま後半を戦えたので良かったです」。そう振り返るのはDF梅田大翔(広島ユース、2年)だ。 後半も埼玉のペースで試合が進んだが、3バックと中盤の選手で上手く相手を挟み込むことで最後の局面で自由を与えない。サイドからクロスを入れられても、190cmの森井を中心としたDF陣がしっかり対応していく。 埼玉は主導権を握りながらも、後半に放ったシュートはわずか1本。カウンターのケアなど守備で存在感を見せたMF小川直澄(浦和ユース、1年)はこう口にする。「今日の広島は3バックだったので、サイドを上手く使っていこうと思っていた。ただ、そこからは相手のCBが大きかったので、簡単にクロスを入れるのではなく、焦れずに回しながら崩したかった。それで最後の怖さが出なかった。もう少しシンプルに行っても良かったかもしれない」。 両者ともに追加点が奪えず、1-1のまま前後半が終了。迎えたPK戦では広島の守護神GK山田が躍動する。先攻だった埼玉の1人目のキックを右に跳んでストップ。勢いに乗った山田は3人目、4人目のキックも防ぎ、PK戦を3-1で終えて、広島が準決勝行きの切符を手にした。 今大会の広島は想定外のアクシデントが続いてきた。初戦となった2回戦の高知県戦では前半7分にFW菊山璃皇(広島ユース、1年)が得点を奪った直後に負傷し、戦線離脱。攻守の要であるMF野口蓮斗(広島ユース、1年)も22日に行なわれるプレミアリーグの大津高(熊本)戦を終えて、この日の準々決勝から合流する予定だったが、悪天候によって試合が1日後ろにズレたため、準決勝からの合流となった。 プラン通りではなくても勝ち上がれているのは、チームとしての一体感があるからだろう。この日、菊山はベンチでメンバーを懸命にサポート。野口もプレミアの大津戦を終えた直後に駆け付けて、試合後の選手を労う姿を見ると、チーム一丸となって戦う姿勢がよく伝わってくる。「一体感や粘り強さが出てきたのは評価できる」と称えるのは遠藤監督だ。 準決勝を前に梅田はこう意気込む。「去年もベスト4を経験しているので、ここまではマストで行こうとみんなで話していた。ここから先、どれだけ行けるかは自分たちの頑張り次第。広島らしく泥臭く戦いながらも、しっかりチーム全員で点を取って、後ろは無失点に抑えたい」。準決勝で戦う福岡県は8月に行なった練習試合で敗れている相手だが、逞しさが増した今の広島なら乗り越えられるはずだ。 (取材・文 森田将義)
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