マリーゴールドの大器・後藤智香 プロレスデビューから3カ月
「私はプロレスラーの後藤智香になれてるんだろうかと。そう思いながら試合に臨んでいました」
プロレス的パフォーマンスが主流になると、勉強のために後藤はプロレス動画を見て、男女問わずライブ観戦にも出かけるようになった。すると、義務感で見ていたプロレスの魅力にどんどんハマっていくこととなる。 「私、練習で最初からケガをしてしまい、プロレスに関して惹かれるものはなかったです。が、生で見るようになってから、こんなにおもしろいエンタメがあったのかってくらい、メッチャ楽しんで応援するようになりました。プロレスって背景があるじゃないですか。それを知るとさらにおもしろさが増しますよね。もう、すっかり虜になってしまいました。ただ、私たちがアクトレスでやってることと何が違うんだろうという疑問も積み重なってきて…」 後藤は通算で59回、アクトレスのリングに立った。が、プロレスのようでプロレスではなく、プロレスとして見られず、プロレスとして報じられることもない。アクトレスガールズそのものがジャンルとして確立し認知されるには、まだ時間がかかりそうだった。 「パフォーマンスではあるけれど、リング上の本気さや痛みは変わらない。これがプロレスだったらもっと注目してもらえるだろうし、私も知ってもらえるのに。プロレスをやらないのなら芸能人になるためのことをしたいし、レスラーになるのなら既存の団体に(移籍するのもあり)とも思いました」 こんな悩みを抱えていたとき、ちょうど新団体の話を聞いた。ここで後藤は風香に相談し、マリーゴールドでプロレスをやりたいと考えた。ちょうど、師匠と慕う翔月なつみも移籍を考えていた。これが後押しとなり、完全プロレスラーへの決意をかためたのである。 とはいえ、プロレスとなると練習方法からすべてが異なる。プロレスを取り入れるのではなく、すべてがプロレスなのだから当然だ。 「アクトレスにいた時間が無駄だったとは決して言いませんけど、同じ練習時間でも密度が違いすぎました。初日から泣いてしまうほど、なんでこんなに辛いんだという厳しさがありましたね。もう全部が違うくらいで、ゼロからのスタートでした」 プロレスをモチーフとしたアクションと、プロレスリングの違いをあらためて痛感したのだ。それでも、さまざまな試練を乗り越え旗揚げ戦に到達。アクトレス時代からユニットを組んでいた天麗とのtWintoWerで翔月&松井組と対戦し、デビュー戦でいきなり白星の快挙。と同時に、ここでもいままでとの違いを痛感したという。 「握手を求めた瞬間の、2人の顔が以前とは違ってたんですよ。アクトレスでやったときも真剣で強い眼差しだったんですけど、旗揚げ戦のときは『あっ、殺される』と感じるくらい殺気がありました。その瞬間、こちらもギュッと身が引き締まったというか、これがプロレスラーの翔月なつみ、松井珠紗なんだなって。じゃあ、私はプロレスラーの後藤智香になれてるんだろうかと。そう思いながら試合に臨んでいました」