「車内で嘔吐」“忘年会シーズン”にタクシードライバーを悩ませるカスハラ問題! 進む対策、悪質客はもう乗れなくなる?
業界が実践する予防策
タクシー業界最大手の日本交通(東京都千代田区)は、カスハラに対する以下のガイドラインを示している(「カスタマーハラスメントへの対応に関する基本方針」から一部抜粋)。 ●要求「内容」が不当な例 ・高額な慰謝料や迷惑料の要求 ・正当理由のない返金要求、代替輸送要求 ・責任者(社長、所長)や上長による謝罪の要求 ・土下座の要求 ●要求「手段・態様」が不当なものの例 ・怒鳴る、乱暴な口調 ・脅迫的言動、暴力的言動 ・長時間の電話、連日の電話 ・車両や会社への長時間の居座り ・「役所やマスコミに通報する」との主張 ・「写真や動画をインターネットに載せる」との主張 ・安全運行を妨害する行為 タクシー業界では、カスハラ対策として、これまで乗務員証に記載されていたドライバーの顔写真や氏名を削除し、会社名のみを表示するように変更した。これは、SNSなどでドライバーへの誹謗(ひぼう)中傷を避けるための対策である。また、教育や指導として以下の対応を行っている。 ・私語をなるべく控える ・乗客と同じ目線で話さない ・目的地までのルートを事前に確認する これらの対応を通じて、トラブルを未然に防ごうとしている。
正当拒否で守るドライバーの安全
タクシーは、基本的に正当な理由がない限り、顧客の乗車を拒否することはできない。これは、道路運送法第13条に「一般旅客自動車運送事業者に該当するタクシーは、運送の引受けを拒絶してはならない」と定められているためだ。 しかし、同法第13条では、天災などのやむを得ない場合(第5項)や、法令や認可された業務に反する行動を求められた場合(第4項)には乗車拒否が認められている。また、同法第6項では「国土交通省令で定める正当な事由がある時は、運送の引受けを拒否できる」とも記載されている。では、正当な事由とはどのような場合か、国土交通省令では以下のように記載している。 ・乗客が法令、公序良俗に反する行為をはたらき、制止に従わない ・乗客が危険物を携帯している ・泥酔者、あるいは不潔な服装をしており、ほかの乗客に迷惑がかかることが予想される ・付添人が伴っていない重病者である ・感染症に罹患している所見がある これに加え、カスハラ客に対して乗車拒否を認めるという条項を約款に追加するタクシー会社も増えている。