選挙報道の現実と課題~有権者が既存メディアに不信を抱き、SNSへの依存を高める理由~【調査情報デジタル】
次に【図表2】を参照してほしい。衆議院議員選挙の公示日翌日のテレビ報道の放送時間を直近7回の衆院選で比較したデータだ。これで見ると、2005年と2017年が突出して高いことがわかる。 2005年が当時の小泉純一郎総理が郵政民営化をめぐって解散を断行した「郵政解散」の総選挙。反対派の候補のところに小泉総裁がわざわざ「刺客候補」を送り込むなど話題になった劇場型選挙だった。2017年は小池百合子・東京都知事が新党「希望の党」を立ち上げ、候補を「選別」「排除」すると発言して話題になった。こちらも劇場型選挙の典型といえる衆院選だった。 劇場型になるとテレビも「情報/ワイドショー」も含めて熱心に報道する。このため、放送時間は長くなる傾向がある。だが、そうした劇場型の衆院選を除けば、選挙の放送時間は4時間台を推移していることがわかる。2024年衆院選のように与党党首の交代で総理が替わっただけという選挙では劇場型にはなりようもなく、盛り上がりを欠いた選挙になってしまい、テレビの側も報道する熱量は低かった。 ■テレビが「争点」にしていたものは?政治改革・裏金問題は? 2024衆院選で各テレビ番組が「争点」として扱っていたものは何だったのかを見てみよう。エム・データがキーワードごとにまとめて検索したものが【図表3】である。 グラフのオレンジ色で示した「選挙期間中」では「争点1」つまり、物価高や“年収の壁”など経済対策が最も長い9時間12分24秒になっている。続いて8時間9分40秒放送したのが「争点2」の政治改革や裏金問題。「争点4」の外交や安全保障が5時間45分22秒。「争点3」の人口減少や少子化対策などが4時間37分39秒などと続く。 このうち、「争点2」の政治改革、裏金問題について見てみると、「選挙期間前」でも15時間あまり報道されている。選挙期間前からテレビが最も長く放送していた争点であることがわかる。「選挙期間中」には8時間9分あまりの放送。