選挙報道の現実と課題~有権者が既存メディアに不信を抱き、SNSへの依存を高める理由~【調査情報デジタル】
通常は各党首のテレビ報道における登場時間は、与党第一党の党首(通常は総理)が最長で、次に野党第一党の党首となるのが選挙報道ではお決まりのパターンだ。野党第三党である国民民主党の玉木氏が「投開票日以後」に立憲民主党の野田代表に迫る放送時間を記録しているのは異例ともいえる状況だ。 選挙の後で、過半数割れした与党側が個々の野党に対して争点ごとに協力をあおぐかたちで国会運営を進めざるを得なくなった。そうした中で、「争点1」で「103万円の壁」の撤廃を主張して有権者の支持を集めた玉木代表が選挙後に壁撤廃をめぐって自民党や立憲主民党などと交渉する様子がニュースの中でもたびたび報じられるようになり、テレビ報道でも露出が増えていた。 少数与党に転落した自民党としては法案や予算案を通すのに野党の一部の賛成を取り付ける必要がある。このため衆院選後の政策のキャスティングボートを国民民主党が握った格好になっている。玉木氏が選挙期間中から主張していた「103万円の壁」の撤廃が与党との協議で実現する方向へと進んでいる。玉木氏の放送時間の急増はそうした表れと分析することができる。 そのほかのトピックで見てみると、【図表3】を見る限り、「選挙期間中」には、日本という国にとって喫緊の課題である「争点3」(少子化対策)、「争点5」(地方創生・防災対策)、「争点6」(選択的夫婦別姓)、「争点7」(原発回帰など)、「争点8」(憲法改正)などにテレビ報道が十分に時間をかけているとは必ずしも言い難い。 ■選挙期間中に主要なニュース番組が選挙を報じない局も…民放で進む「手抜き(?)」の報道 【図表6】は選挙期間中に、平日(月~金)の夕方と夜の主要ニュース番組で衆議院選の報道をどういうかたちでしたのかを、エム・データの「TVメタデータ」の記録を元に筆者が独自に検証した結果だ。テレビはニュース番組でも月曜から金曜までの平日と、土日では番組編成が大きく変わってしまう。このため、各放送局や各番組の姿勢は平日で調査しないと傾向はわからない。