選挙報道の現実と課題~有権者が既存メディアに不信を抱き、SNSへの依存を高める理由~【調査情報デジタル】
この結果にテレビの報道はどの程度、影響を与えたのだろうか。2024年の衆議院選挙のテレビ報道の放送時間はどのくらいの量だったのだろうか。 筆者はエム・データの集計に基づいて10月15日(火)の公示日以降で10月27日の投開票日の前日までの選挙運動が許される「選挙期間中」(12日間)と、10月3日から公示日前日までの12日間の「選挙期間前」と、「投開票日以降」の11月8日までの12日間の3つの期間にわけて、それぞれ衆議院議員選挙に関連する番組をキーワードで検出して放送時間の比較を実施した。 テレビ番組の種類は「ニュース番組および報道番組」を一つの番組ジャンルにし、「情報番組とワイドショー」をもう一つの番組ジャンルとして集計した。政治ネタを元にスタジオでタレントらがトークするバラエティ番組も後者にまとめて、時期別の放送時間をグラフ化したのが【図表1】である。 筆者は2012年の衆議院選挙以降、テレビの選挙報道について国政選挙などのたびに分析をしている。その経験でいえば、「盛り上がる」選挙になると「情報/ワイドショー」が「ニュース/報道」以上に放送時間が長くなる傾向があると言える。 「情報/ワイドショー」番組は視聴率を重視する制作姿勢が顕著で視聴者の関心がここに集まっているとなると、集中的に同じテーマを放送する傾向がある。だが、今回の2024衆院選では【図表1】で明らかなように「ニュース/報道」番組の方が「情報/ワイドショー」番組よりも圧倒的に放送時間が長い。それだけテレビ局にとっては「盛り上がりに欠けた」選挙だったといえる。 「選挙期間中」に注目すると放送時間の合計は44時間あまり。しかし「投開票日以降」にはこの傾向が続くものの「ニュース/報道」番組の放送が増えていることは注目に値する。投開票の結果に示された争点をめぐる“民意”が選挙の後になって、引き続き、テレビ番組のトピックになっていることを示している。