選挙報道の現実と課題~有権者が既存メディアに不信を抱き、SNSへの依存を高める理由~【調査情報デジタル】
なかでも選挙の公示(あるいは告示)の後から投票前日までの「選挙期間中」はテレビなどのメディアが上記のお決まりの定型的な報道ばかりやって、しかも時間を十分にとらない。各候補を一律に紹介しようとする。そのことで有権者がほしい情報が届かない「空白」が生じた。 それが既存メディアも想定していなかった“石丸現象”や“斎藤知事返り咲き”などにつながったと見る識者は朝日新聞にこうした談話を発表した日本大学危機管理学部の西田亮介教授など少なくはない。 実際に時間の制約が少ないSNSと連動する配信コンテンツの方が候補者らの主張をたっぷりと見ることができて、SNS(YouTubeなどの動画メディアも含む)の方が信頼できると評価し、そちらを利用して投票を決めたという人が増えているのが現状だろう。 SNSは時にフェイク情報や個人への誹謗中傷を含む場合があるとしても新聞やテレビよりも柔軟に、楽しく、見やすいスタイルで大量に情報発信している。本当にテレビはSNSに負けてしまったのだろうか。 本原稿では2024年の衆議院議員選挙について首都圏で放送された地上波テレビの選挙報道についてふり返りながら、テレビの選挙報道には何が足りないのか。現状がどうなっているのかを検証していきたい。 参照したのは地上波テレビの番組やCMの放送内容と放送時間などをデータ化している株式会社エム・データから提供を受けた「TVメタデータ」である。同社から提供されたデータを筆者なりにアレンジし直して分析したのが以下の論考である。 ■選挙期間中のテレビ報道の“量” 岸田前総理の退陣表明を受けた自民党の総裁選で新しく総裁になった石破茂総理の手による解散総選挙。選挙の結果として自民党は第一党の座をかろうじて維持したものの議席を50以上も失い、2012年の衆院選以降維持してきた単独過半数も割り込んだ。連立与党の公明党を加えても過半数を下回る惨敗となった。一方で野党第一党の立憲民主党が議席を50増やしたほか、野党第三党の国民民主党も議席を4倍増させた。