高齢の飼い主がペットの世話をできなくなったら――人と動物が最後まで幸せに暮らすために準備すべきこと
ペットの世話は介護保険の対象外。ヘルパーの思いは
自宅に訪問している介護ヘルパーやケアマネジャーが、世話されていないペットに遭遇するケースも少なくない。介護保険の制度内のサービスと自己負担サービス、両方を行っている「NPO法人グレースケア機構」で介護福祉士を務める藤原るかさんに話を聞いた。 「あるお宅では、シェパードが大きなケージに入っていました。力が強いから、ほえながらケージごと動いて近づいてくる。するとケージについている便も一緒についてきて、床が汚れてしまうのです」 ある高齢者は認知症が進み、屋内に犬がいるのに認識できず、外で探し回っていた。自宅近くの区役所のケースワーカーからその話を聞いた藤原さんは、親族の了承も得たうえでその犬を預かり、譲渡先を探した。
ペットの世話は介護保険の対象外なので、原則としてヘルパーは手を出すことができない。全額自己負担であれば、介護サービスの前後などに行うことも可能だ。ただ、ヘルパーのなかには、飼い主の自己負担が難しく、ボランティアでエサを買いに行ったり、排泄物の掃除をしたりしている人もいる。 「ボランティアではヘルパーの負担も大きいし、根本的な解決にはなりません。例えばドイツの介護保険には現金給付も含まれていて、それをペットの世話にあてることも可能です。条件付きでもいいから、日本でも認めてほしい」 グレースケア機構は、自費サービスでペットケアを一部受け入れてきたが、いずれペット事業部を設けることを視野に入れ、準備会を立ち上げた。 「この冬は久しぶりに帰省される方も多いでしょう。親の体力や認知能力が変化していないか、ペットの状態が悪くなっていないか、少し見ただけでは分からない場合もあります。毛がちゃんとブラッシングされているかなど、観察してみるとよいかもしれません」
転倒リスクを散歩代行サービスで回避する
高齢者によるペットの世話には思わぬリスクもある。犬の散歩中に転んで骨折してしまい、それをきっかけに要介護となることも。そのまま高齢者施設に移行し、ペットを家族が引き取れず譲渡先が見つからなければ、最悪の場合には殺処分されるケースもある。転倒を防ぐ方法の一つが、散歩代行だ。 散歩代行などのペットケアサービスを提供している「おさんぽWan」(東京)を訪ねた。散歩代行料金は犬の大きさによっても違うが、1回30分で2000円前後だ。 代表の丹羽やすまささんが定期的に散歩を代行している高齢者の飼い犬は5頭ほど。そのうちの1頭が、87歳になる高橋好子さんが飼っている柴犬のさくらちゃん(7歳)だ。