高齢の飼い主がペットの世話をできなくなったら――人と動物が最後まで幸せに暮らすために準備すべきこと
飼い始めるのは何歳まで? 「自分は元気」と思っても
約20年にわたって動物保護活動を続けている「Hope to Life チームZERO」代表の峰昌姫さんは、しばしば切羽詰まった状況での判断を迫られる。 「2018年11月、地域包括支援センターの方から電話がありました。利用者さんが急遽施設に入ることになり、行き場のない犬がいる、と。時間の猶予がないので、とりあえず駆けつけて引き取りました」 引き取ったからといって、すぐに譲渡先が見つかるわけではない。 「飼い主が高齢者の場合、犬や猫も高齢の場合が多く、なかなか譲渡に結びつかないことがあります。愛護団体は犬猫の譲渡先が見つからない場合、自分たちが飼育者にならざるを得ない。ですから、無責任に全て引き取るわけにはいかないのです」
60、70代の人から、犬や猫を譲渡してもらえないかという問い合わせもある。定年退職後、時間ができたからペットを飼いたい。犬の散歩は健康に役立つ。そういう声もある。だが、「自分はまだ元気」と思っていても、年を重ねればいつ何があるか分からない。 「私は55歳以上の人には、原則、子猫を譲渡しないことにしています。55歳以上の方に『5歳くらいの猫はどうですか?』と聞くと、やっぱり子猫がいいと言う。でも75歳になった時、その人が元気かどうかは分かりません」 一般社団法人ペットフード協会が発表した「令和3年 全国犬猫飼育実態調査」によると、犬全体の平均寿命は14.65歳、猫全体は15.66歳。20年生きる猫も珍しくはない。自分の年齢に20年を足した時、その時点で責任を持って飼える状態かどうか、よく考える必要があるだろう。
自分がもし面倒を見られなくなったら――
ペットと人間の関係について研究している帝京科学大学生命環境学部の濱野佐代子准教授は、高齢者がペットを飼うことは、決して悪いことではないと言う。 「孤独感が軽減されますし、ペットを通じて社会とつながることもできる。ただ、面倒を見られなくなった場合の準備はしておくべきです。ペットを飼っている高齢者に自分に何かあったらどうするか調査をしたところ、約6割の人が『同居の家族か離れて暮らしている家族がなんとかしてくれるだろう』と期待を持っていました。しかし『期待している』だけでは、実際にそうなるという保証はありません。もちろん、家族や知人と話し合って、いざという時の行き先を決めている人もいます。散歩で親しくなった犬友だちに、お金を渡して託すと決めている人もいました。それから、ペットが次の場所で幸せに暮らすためには、きちんとしつけをしておくことも重要ですね」