豪雪地帯・十日町の古民家に魅せられたドイツ人建築家の10年。カール・ベンクスさんが移住して10年、古民家再生を続けて今起きている変化 新潟
厚い断熱材を壁に入れるため、柱の太さより壁のほうが厚くなり、本来は家の外に柱が見えることはありません。そこでカールさんは、デザインとして“付け柱”を備えます。 もちろん間取りも“今”の生活に添った間取りに変更します。自由に間取りを変えられるのは、木造軸組工法の良いところの1つです。 例えばカールさんの自宅、双鶴庵の場合、屋根裏にロフトを設置。葺き直した茅葺き屋根に近いため、茅の香りがするこの特別な空間に、カールさんはクリスティーナさんのための書斎と、寝室を設けました。また妻のクリスティーナさんがお気に入りの景色を眺めながら調理できるように、キッチンの前に大きな窓を備えています。
日本の伝統色とは異なる、カラフルな古民家
もう一つ。カールさんの再生する古民家には大きな特徴があります。それは色。「イエローハウス」と名付けられた古民家をはじめ、双鶴庵は妻のリクエストでバラ色ですし、十日町市のシェアハウスはグリーン……。日本の伝統的な色とはまったく異なる、色とりどりの古民家です。
20年以上前に「イエローハウス」を購入した吉田えり子さんは、やはりその色に誘われた1人と言えるかもしれません。東京で暮らしていた吉田さんですが、昔から同世代の友達と集えるような場所が欲しかったそうです。そんなある日、たまたま本屋さんで日本全国の再生された古民家が掲載されている本を手に取り、購入。 しかしページをめくる度に「日本の古民家は素敵だなと思いましたが、どこかさびしい感じがしました」とのこと。 ところが唯一、ページをめくる手が止まった古民家がありました。それがカールさんの手がけた「イエローハウス」です。 「和洋折衷のモダンな、温かい感じがあったんです」(吉田さん)
しかも、購入者を募集している、なんて書かれていました。もう居ても立っても居られず、すぐさま竹所へ。実際の建物を見て、そしてカールさんにも会い、その場で購入を決めました。 すぐにでもここに暮らしたいと思ったそうですが、購入したころはまだ東京で仕事をしていたため、しばらくは休みの日などに友達を誘って訪れていたそう。やがて、友人のひと言でカフェを開くようになり、ついに昨年仕事をリタイアしてカフェの経営に本腰を入れることに。今年の秋からイエローハウスで暮らすことになりました。
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