豪雪地帯・十日町の古民家に魅せられたドイツ人建築家の10年。カール・ベンクスさんが移住して10年、古民家再生を続けて今起きている変化 新潟
カールさんによれば、ドイツでも少し郊外に行けば、日本家屋と同じく柱と梁を用いた木造軸組工法の家々が当たり前のようにあるそうです。またバルト海に近い北の地域には茅葺きの屋根の家もたくさん建っているのだそう。 「ただ、技術や材料は日本が世界一です」(カールさん)
例えばドイツでは柱と梁を繋ぐ際に大きなボルトなど、金物を使います。しかし日本の古民家は、釘を使わずに建てる技術があるほど、基本的にはドイツよりも金物を使いません。 「ドイツでは曲がった木材は製材してまっすぐにします。ところが日本の職人は曲がった木材でさえ、巧みに梁として利用します。ブルーノ・タウトも『日本の職人は芸術家だ』と言っています。 ですから、たとえ見た目はボロボロでも『世界一の材料』を『世界一の技術』で組み直せば、見事に復活できるというわけです」(カールさん)
カールベンクスハウス「三井屋」の玄関まわり。ドアを囲むように備えられた大きな木は、もともと火鉢のある一枚板のテーブルとして使われていたものを再利用したそう。
時代に合わせて機能を向上させ、間取りを変える
しかし、単に“組み直す”わけではありません。 「今の時代の生活に合わせる必要があります。傷んだ所を接ぎながら使い続ければ平気で100年くらい保つ日本の家屋が、なぜ今捨てられているのか。それは今の時代に合っていないからだと思います」(カールさん) 例えば断熱材の無かった時代に建てられた古民家は、夏は暑く冬は寒いのが家の中でも当たり前でした。また以前の日本家屋では食料を腐らせないように、台所は日の当たらない北側につくられるのが一般的だったため、どうしても暗くなりがち。もちろん、現在の耐震基準にも対応していません。 カールさんが古民家を再生する場合は、まず使える柱や梁の部材を見極め、必要に応じて新しい木材に変えます。また壁に筋交いを入れて構造を補強。 さらに断熱材をたっぷりと使います。日本の古民家の多くは薄い土壁と板、窓は薄いガラス1枚で、外の空気と隔たれていました。一方カールさんは厚い断熱材を組み込み、窓にはドイツから輸入した複層ガラスを用いた木製サッシを使います。さらに床暖房も採用。
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