豪雪地帯・十日町の古民家に魅せられたドイツ人建築家の10年。カール・ベンクスさんが移住して10年、古民家再生を続けて今起きている変化 新潟
ですから、訪れた理由には仕事に繋がる古民家を見つけることもありましたが、日本での活動拠点も探していました。さらに、この時カールさんは51歳。引退後の終の住処について、国際線のCAだった妻のクリスティーナさんとよく話すようになっていたころでした。 終の住処の候補については、アルプス山脈が横たわるドイツの南側もありましたし、妻のクリスティーナさんが国籍を持っているスイスもありました。
「でも、アルプスの山はとても険しい。ここ(竹所)の山とは違います」(カールさん) しかも、朽ち果てそうとはいえ、日本の古民家が残っていました。カールさんは、すぐに廃屋の所有者に連絡を取り、購入を即決。 ひと言の相談もなく買ったことに対して最初クリスティーナさんは腹を立てたそうですが、初めて竹所を訪れると、その美しい景色にやはり一目惚れ。こうして見つけた古民家を「双鶴庵(そうかくあん)」として再生しました。
双鶴庵が出来上がるやいなや、もう1軒の空き家を「もったいない」と自腹で購入し、同じように再生。それが今とても人気のカフェになっている「イエローハウス」です。
カールさんが初めて竹所を訪れてから、もう31年が経ちました。今や竹所には13棟、竹所の最寄駅「まつだい駅」のある松代の商店街には12棟、全国で70棟近くの古民家がカールさんによって再生されています。 現在、竹所の世帯数は15世帯。決して多くはありませんが、子育て世代の若い移住者が増えたことで、人口の半分以上が65歳以上を占める、いわゆる限界集落を脱しています。
日本の古民家は、世界一の技術と、世界一の材料でできている
それにしても当時、崩れかけた茅葺き屋根や、外張りされた板が至るところで剥がれ落ちてボロボロになった土壁が露出しているような、廃屋寸前の小さな古民家を、なぜ即決で購入したのでしょうか。白川郷にある茅葺き屋根の家屋とまでは言いませんが、外国人はもとより、日本人でさえも「古民家」と言えば、つい最近まで人が暮らしていたかのような、もう少しキレイな古民家を頭に浮かべそうなものですが。 「幾度も日本家屋をドイツに移築していましたから。日本で古民家をバラして、柱や梁などをコンテナに積んで輸送し、ドイツで組み立て直していたので、日本の古民家は簡単にバラせることや、再び組み立てられることを知っていました。ですから、見た目はボロボロでも、日本家屋は再生できると分かっていました」(カールさん)
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