豪雪地帯・十日町の古民家に魅せられたドイツ人建築家の10年。カール・ベンクスさんが移住して10年、古民家再生を続けて今起きている変化 新潟
豪雪地帯としても知られる新潟県十日町市。ここに、次々と若い人々が移住してくることから「奇跡の集落」と呼ばれている竹所(たけところ)集落があります。 山奥の限界集落という言葉のほうがふさわしいような竹所が、なぜ「奇跡の集落」と言われるようになったのでしょうか。その奇跡は、ドイツ人の建築デザイナーであるカール・ベンクスさんが、偶然訪れたことから始まりました。
新潟県十日町市の中心街にある十日町駅から車で約40分、住民の念願がようやく実って開通した北越急行ほくほく線の、最寄駅であるまつだい駅からでも約20分。竹所は、自然豊かな山中にある小さな集落です。
小さいながらも、竹所には昭和30年代に30軒以上の家がありました。しかし、全国に点在する他の山間部の集落同様、少子高齢化と人口流出の波にあっという間に飲み込まれ、カールさんが訪れた平成5年(1993年)には、わずか9軒にまで減っていました。 そんな廃村の危機に見舞われていた竹所に、お米の買い付けに行くという知人に誘われて訪れたカールさんは、1軒の廃屋に一目惚れしました。中に入った時に骨組み(柱と梁)やケヤキが使われている材料の良さにも魅了されただけでなく、廃屋からの景色も含めて目を奪われたそうです。 「目の前の山々がとても優しかったんです」。そんなふうにカールさんは表現します。 ドイツの旧東ベルリンに生まれたカールさん。彼が生まれる2カ月前に第二次世界大戦で戦死した父は日本美術に高い関心を寄せていたそうです。建築家のブルーノ・タウトが日本建築に関して記した著書も、父の遺品の1つでした。 それもあってでしょう、幼いころから日本に興味がありました。若いころには約7年間日本で生活したこともあります。やがて建築デザイナーとして活躍するようになると、当然のように日本の古民家に強くひかれ、ドイツに日本の古民家を移築する仕事に携わります。そうした中で訪れたのが竹所でした。
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