【夏の甲子園決勝】京都国際&関東一 指揮官と選手たちが試合後に明かした「延長10回タイブレーク」1点をめぐる攻防の真実
【バント→バスター変更の理由】 ストライクがほしかった。いや、取らなければいけなかった。 【写真】実力派の野球美女たち。私服・ユニフォーム姿の厳選カット集(19枚) 0対0で迎えた10回表。無死一、二塁から始まるタイブレークで関東一は勝負をかけた。初球を投げる前。ファースト、サードが本塁、ショートが三塁ベースへ走る。ブルドッグシフトと見せかけ、セカンドが二塁ベースに入るけん制を見せる。二塁走者に思いきったスタートを切らせない準備をしたところで、初球にブルドッグシフトをかけた。 「(シフトは)いつも練習しています。(甲子園でプレーしていない)下の学年もみんなやっています」(関東一・伊藤慎二コーチ) ファースト、サードが本塁へチャージをかけ、ショートが三塁ベース、セカンドが一塁ベースへ走る。左打者に対し、投手は外角にストレートを投げ、三塁手の前にバントをさせるのが狙いだ。ところが、坂井遼の投げた133キロの外角直球はバントの構えをする左打者の外側に外れるボールとなった。 「ボールから入ったのが痛かったですね。ボールから入るとヒッティングの確率が上がる。一番悔しい部分ですね」(関東一・米澤貴光監督) 思いきってチャージをかけるブルドッグシフトは、ヒットゾーンが大きく広がる。リスクが大きい作戦だ。基本的には何度もかけるシフトではない。だからこそ、ストライクを投げ、1球でバントさせたかった。 打席に立っていたのは、9番の投手・中崎琉生(るい)の代打・西村一毅だった。同じ投手だが、小牧憲継監督は西村の打撃に信頼を置いている。2年生の三塁手・清水詩太は「(先輩なので)言いづらいんですけど......」と前置きをしたうえで言う。 「小牧さんはいつも『中崎が投げていると打線が落ちる』と言うんです。西村のほうがバッティングはいいですし、バントもうまい。西村を信頼していると思います」 9回まで4安打無失点。実質"完封"の好投を見せた3年生エースに代わりに打席に入った2年生の西村はバントの構えで見送る。この時点で、ベンチの小牧監督は「ファースト、サードがチャージをかけてきたら打て」というジェスチャーを見せていた。