82歳の料理研究家が語る元気の秘訣 冷凍食品と電子レンジで作る朝食も紹介
西日本新聞のくらし面で「村上祥子のきょうの一品」を連載している料理研究家村上祥子さんの講演・料理実演会が11月20日、福岡市・天神で開かれました。テーマは「ちゃんと食べて、ちゃんと生きる~人生100年時代 生涯現役の『食べ力』」。現在82歳の村上さんは自宅での料理教室やテレビ出演、講演会、料理本の執筆、食品メーカーとの商品開発など精力的に活動しています。自身の生活を紹介しながら、高齢期の栄養の取り方をアドバイス、参加者約130人を前に電子レンジとマグカップを使った簡単調理法で11品を作りました。(文・山本孝子、写真・軸丸雅訓) 【写真】電子レンジを使って調理されたチキンカレー みなさま、こんにちは。村上祥子です。「ちゃんと食べてちゃんと生きる」と言い続けて55年がたちました。 私は電子レンジに日本一詳しい人なんだそうです。ですが昔は「電子レンジ調理は手抜き」とか「電磁波は危ない」と言われていました。ところが今や文部科学省が「『電子レンジで早寝早起き朝ご飯』という食育授業をやってください」と言う。大人になって一人で食べることができる人間に育てることが大切だという考えになってきたのです。最近では大人への食育も必要だと私は感じています。 さて「村上さん、どうしてそんなに元気なの?」と聞かれますが、その秘ひ訣けつはよく歩くこと。1日1万歩は歩いて、全くくたびれません。 人生100年時代、生涯現役でいるために大事なのは「食べ力」。これは私が作って商標登録した言葉です。1日3食こつこつ食べる。エネルギーとなるご飯やパン、めんなどの炭水化物を1日3回食べること。 次に野菜を1日350グラムとる。野菜には色素やにおい、苦みなどのファイトケミカルという成分が含まれ、抗酸化作用があります。人間の体内ではエネルギーを作り出すと活性酸素がたまっていき、がんや生活習慣病の原因になると言われていますが、ファイトケミカルには活性酸素を減らす効果があります。 1990年にアメリカ国立がん研究所が、がん予防に効果がある食品を並べた「デザイナーフーズリスト」を発表しました。一番トップにあるのがにんにく、次のグループに玉ネギがある。これを基に私は「玉ネギ氷」と「にんたまジャム」を考案しました。 50歳を過ぎたら筋肉を増やし、骨量を減らさないこと。「筋骨丈夫」っていいますね。筋肉を増やすためには1回の食事でタンパク質食品を130グラム程度取ることが大切だと思います。 これまで「骨を作るにはカルシウムを取ること」と習ってきましたが、一緒にタンパク質をとらないと骨は作れないし、この二つを結合させるビタミンD3も必要です。それが多く入っているのがサバやイワシなどの青魚。サバ缶やイワシ缶にはタンパク質、カルシウム、ビタミンDが全部入っているので、利用してください。 加えて免疫力を上げること。そのためには腸内環境を整えることも大切です。私は毎朝、無調整豆乳と甘酒を合わせて飲みます。豆乳は鉄分や多くのミネラルを含み、甘酒は腸内環境を整えるオリゴ糖を含んでいます。 高齢者の中には、食べることや買い出しがおっくうだという方々が多いと聞き、電子レンジとマグカップを使った調理法を考案しました。1人分を作るのにちょうどいいし、持ち手があるので加熱して熱くなっても持てます。 私の1日の食事を紹介します。朝食はワンパターン。発芽玄米と白米を混ぜたご飯150グラムを冷凍しておいて、朝レンジで温めます。それに卵と納豆、野菜。余り野菜100グラムを切って、タンパク質食材50グラムと合わせて冷凍パックを作っています。それを器に入れて水を加えてレンジにかけてみそ汁を作ります。 お昼はスタッフとまかないご飯です。夕飯は市販品を使うこともあります。おでんパックなら、ホウレンソウをレンジで加熱して入れると野菜が取れます。 そして明日もきっといい日になる、と思って眠りに就きます。 私のレシピなどに興味がある方は母校の福岡女子大に「村上祥子料理研究資料文庫」があります。私が集めた料理レシピや資料50万点が納めてあります。どなたでもご覧になれます。お時間があったらお出かけください。(談)