【“日本人の魚離れ”もどこ吹く風!】快進撃を続ける鮮魚チェーン「角上魚類」 躍進を支える「あえて人件費を掛ける」ビジネスモデルの秘密
日本人の魚離れが進んでいる。水産庁「令和5年度 水産白書」によれば、食用魚介類の1人当たりの年間消費量は、2001年度に40.2kgだったところ2023年には22.0kgと半分近くまで落ち込んでいる。 【写真】2024年大晦日、午前3時に店の前は大行列。店内も多くの人で賑わう
そうしたなかで、16年連続増収、直近6年間で約100億円の売上増と絶好調なのが鮮魚チェーン「角上魚類(かくじょうぎょるい)」だ。新潟県の鮮魚直営店を発祥とする1976年設立の老舗企業であり、現在は関東郊外や信越地域に23店舗を展開している。 角上魚類の発祥地と同じ新潟県の漁師の家庭に生まれ、東京海洋大学の非常勤講師を務めるながさき一生さんの著書『魚ビジネス』(クロスメディア・パブリッシング)より、「角上魚類」のビジネスモデルの秘密について一部抜粋・再構成して解説する。(*店舗数などは、2024年12月時点の最新のデータに更新しています)
午前3時前から行列ができる店舗も
昨今の魚離れの状況の中、業績好調を維持し続けている魚屋があります。その1つが関東や信越地区を中心に23店舗を展開する「角上魚類」です。 角上魚類は、新潟県長岡市寺泊に本社を構える魚屋で、店舗によって年末ともなれば午前3時前から行列ができる人気店です。テレビでも度々取り上げられ、その日に揚がった新鮮な魚介が安い値段で売られている様子が伝えられています。 このように、角上魚類が繁盛しているのはなぜなのでしょうか。これは、売上が芳しくないとされる一般的なスーパーの魚売り場と比較をすると一目瞭然です。ここからはそのポイントを3つに分けてお伝えしましょう。
【1】対面コーナーが充実している
第一に角上魚類は、対面コーナーが充実しています。対面コーナーとは、魚を置いて店員がお店と相対しながら販売をする売り場です。 角上魚類は、どの店舗にも必ずこの対面コーナーがあります。そこでは、日々違う魚が、基本的に丸魚の状態で、パック詰めされずに置かれています。 対面コーナーの良いところは、魚に詳しい店員とコミュニケーションを取りながら買い物ができるところです。分からないことがあれば聞いたり、店員側からもおすすめの魚や食べ方の提案を受けたりすることができます。日々、違う魚が入荷する点も楽しく、嬉しいところです。 一方で、一般的なスーパーの場合は、魚がパックに入れられて、ただ置かれているだけです。これでは、魚の知識が相応にないとどうやって食べて良いかが分かりません。また、様々な魚の中から今日は何を買うべきなのかが分かりません。
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