東大→トヨタ→住所不定無職から「人口4000人の町」で起業。「この世界はロジカル思考で解決できることばかりじゃない」
テクノロジーで、長屋家族を取り戻す── 。そんな思いのもと、人口約4000人の町、北海道厚真(あつま)町で地域の困りごとを解決する仕組みを実装した人がいる。 【全画像をみる】東大→トヨタ→住所不定無職から「人口4000人の町」で起業。「この世界はロジカル思考で解決できることばかりじゃない」 マドラーCEO、成田智哉だ。サービスの名前は『ミーツ』。“移動手段がないけれど買い物に行きたい” “スマートフォンの使い方を教えてほしい” “雪かきを手伝ってほしい”といった困りごとに対して、時間や体力のある人が手を貸すマッチングサービスだ。 地域課題を「DX(デジタルトランスフォーメーション)」✕「泥臭さ」で解決し、地域での世代を超えた循環を生み出すことを目指している。地方の課題解決の新しい形として注目される仕組みだが、実装までにはどんな道のりがあったのか。
なぜ人間は、不合理な判断をするんだろう?
成田は北海道千歳市に生まれ育った。現在拠点を構えている厚真町の隣に位置する市だ。高校時代に「もっと広い世界を見たい」と思い上京を決意した成田は、通っていた高校初の東大生を目指し、見事合格を果たす。 「大学では、歴史文学を専攻しました。人間社会ってすごく複雑怪奇。その象徴が、歴史だと思うんです。なぜこんなに不合理な判断をするんだろう? ロジカルな思考やデジタルで解決できることばかりじゃないから、人間って面白いな、と思って」 さらに国と国は基本的に国境というもので分けられているが、紛争などで二分したり、逆にEUのような欧州連合が生まれたり、グラデーションを描くこともある。 「それがすごく面白くて。外交官になることも考えたのですが、国よりも経済を通して働きかけたほうが、もっと緩やかな国同士の関係体を築けるだろうと考え、“民間外交官”として民間企業でグローバルな仕事をやりたいと思ったんですよね」 そこで、日本で最もグローバルに事業を展開している企業という観点で就職先に選んだのが、トヨタ自動車だ。車やバイクが好きで、モビリティに興味を持っていたことも決め手となった。