東大→トヨタ→住所不定無職から「人口4000人の町」で起業。「この世界はロジカルに解決できることばかりじゃない」
GAFAも持っていない情報をデータ化できる強み
ミーツのミッションは「テクノロジーで長屋家族を取り戻す」。「助けてほしい」ことに対して手を挙げるときのツールは、高齢者でも利用率の高いLINEだ。さらにスマートフォンなどを使わない人のために、電話でも利用できるようにした。利用登録は、紙面でも受け付けている。 現在は厚真町で困りごとを抱えるユーザーが約200人、解決してくれるパートナーが70名程度登録されている。困りごとに対する報酬は、1000円から2000円程度が相場だ。 さらにミーツは、日本の地方に山積する課題を解決に導きながら、地域にどんな困りごとがあるか、可視化する取り組みも進めている。 「GAFAが唯一取れていないのは、地方の高齢者のデータです。アナログユーザーが何を求めているかはほぼデータ化されておらず、これまでは行政や福祉が困りごとの解決を担当するにとどまっていました」 ミーツを利用すれば、たとえば“この時間にこういう場所に行きたい”というニーズや、“このエリアの人たちは雪かきに苦しんでいる”といったデータが取れるため、それらを行政に提供してまちづくりに生かしてもらうこともできる。さらに困りごとが解決したあと、ユーザーとどのようなコミュニケーションがあったかを報告してもらうことで、解像度の高いデータを収集できるのだ。 「ミーツでやっているのは、住民自治の力を取り戻す作業なんです。高度経済成長を経て地域のコミュニティは崩壊し、核家族化が進みました。しかし少子高齢化に突入する日本で、その時代の代償を払うように、これからもすべて自分たちの力だけで生きていきなさいというのは、限界があると思います」 都会は交通も発達していて、家事などの代行サービスにお金を買う仕組みも定着している。しかし田舎ではある程度、地域の関係資本が蓄積されているため、そこを緩やかにつなげ直していくことで価値を作れるのではないかと成田は考えている。