まだ無名だった作曲家エルガーが、婚約の贈り物として捧げた名曲【クラシック今日は何の日?】
クラシックソムリエが語る「名曲物語365」
難しいイメージのあるクラシック音楽も、作品に秘められた思いやエピソードを知ればぐっと身近な存在に。人生を豊かに彩る音楽の世界を、クラシックソムリエの田中 泰さんが案内します。
エルガー『愛の挨拶』 苦労人エルガーの思いが込められた名曲とは
今日6月2日は、エルガー(1857~1934)の誕生日です。 近代イギリスを代表する作曲家エルガーは、オルガニストの父と芸術好きの母の間に生まれ、自然に音楽に親しみつつ、10歳の頃から作曲を始めています。 正規の音楽教育をほとんど受けていないにもかかわらず、地方の楽隊長や教会オルガニストを経て、1889年にロンドンで作曲活動を開始。1898年から1899年に作曲した『エニグマ変奏曲』によって名声を確立します。 そのエルガーがまだ無名の頃。ピアノの生徒である裕福な家庭の娘キャロライン・アリス・ロバーツと恋に落ちます。しかし、アリスのほうが8歳も年上であったことや、身分や宗教の違いを理由に、アリスの家族から交際を猛反対されてしまいます。しかしお互いを認め合っていた2人は、周囲の反対を押し切ってついに結婚。婚約の贈り物として、エルガーがアリスに捧げた小品が、彼の代表作として名高い『愛の挨拶』でした。 その後、アリスの献身的な愛に支えられたエルガーは、作曲家として大成。2人は末永く幸せな結婚生活を営むことになったのでした。
田中 泰/Yasushi Tanaka
一般財団法人日本クラシックソムリエ協会代表理事。ラジオや飛行機の機内チャンネルのほか、さまざまなメディアでの執筆や講演を通してクラシック音楽の魅力を発信している。
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