日本が戦争犯罪の“抜け穴”になるおそれも…プーチン大統領に“逮捕状”出した日本人裁判官 単独取材で見えた「日本の課題」
日テレNEWS NNN
ロシアのウクライナ侵攻をめぐり、2023年3月にプーチン大統領に戦争犯罪容疑で逮捕状を出した国際刑事裁判所の赤根智子裁判官が、NNNの単独取材に応じた。赤根氏は「日本が戦争犯罪のループホール(抜け穴)になるおそれがある」と指摘する。その理由とは。 (NNNニューヨーク支局 橋本雅之)
■ロシアから指名手配の赤根氏「夜は出歩かず、食事相手は知人のみ」
2018年、ICC(=国際刑事裁判所)の裁判官に就任した赤根智子氏。日本人としては3人目だ。22年2月、ロシアがウクライナへの侵攻を開始したことについては、「ヨーロッパで戦争犯罪が大々的な形で起きるとは思っていなかったので衝撃を受けた。自分自身も目が覚めた気がする」と振り返る。23年3月には、ウクライナの占領地からの子どもの連れ去りに関与したとして、ロシアのプーチン大統領に対し、戦争犯罪容疑で逮捕状を出す判断に加わった。
ロシア側は激しく反発し、赤根氏らを指名手配している。赤根氏は、指名手配されたことを受け、日ごろから安全面に配慮していると語った。 「私はもともと日本の検事です。被疑者による物理的・肉体的、あるいはそれ以外の脅威にさらされることがないわけではない。それに負けていては、司法の仕事は務まらない。(ロシアに指名手配されて以降)なるべく昼間に出歩き、外では飲み歩かないようにしている。食事も知人ととるようにしていて、面識がない人とは食事に行かない」 赤根氏は、自らの身に危険が及ぶことは「あり得る」と語った。指名手配されて以降、実際に怖い目にあったことがあるかについては「さまざまな関係者がいるので申し上げられない」と述べるにとどめた。
■「ICCは最後の砦(とりで)」 逮捕状に有効期限なし
ICC(=国際刑事裁判所)はオランダ・ハーグにある。戦争犯罪や人道に対する罪、大量虐殺などを犯した個人を訴追して処罰するために設置された常設の国際刑事裁判機関だ。2002年に設立条約が発効し、日本は07年に加盟した。現在123の国と地域が加盟しているが、ロシアやアメリカ、中国などは加盟していない。そのため、プーチン氏が自国にとどまる限り、逮捕は困難な状況だ。ただ、ICCの加盟国を訪問すれば身柄を拘束される可能性があり、逮捕状が出たことでプーチン氏の外遊は事実上、制限されている。 赤根氏はプーチン氏への逮捕状について「3人の裁判官で慎重に相談しながら決めた」とした上で、十分な証拠があったことを強調。「日本の逮捕状とは異なり、ICCの逮捕状には有効期限がない。長いスパンで見ている」と述べ、ICCが「最後の砦(とりで)」としての役割を果たすことが重要だと語った。