『源氏物語』22歳の源氏と結ばれた14歳の紫の上。まだ幼い紫の上は<結婚>について誰からもきちんと教えてもらっておらず…
◆異例だった結婚 源氏の乳母子と、紫の上の乳母子の会話ですが、それぞれの主君や姫君の気持ちがよくあらわれています。 源氏はこの結婚を少しでも公的なものにしたいと思い、一方の紫の上は、まだ状況がのみ込めていないのだと、幼さを主張しています。 もっともこのとき、紫の上の乳母である少納言の乳母は、源氏からの敬意のこもった心遣いに、涙を流して感謝するのでした。 少納言の乳母は、源氏がこれほどまでに、紫の上を大切にしてくれるとは思っていなかったからです。それくらい、二人の結婚は異例なことでした。 平安時代にはありえなかった、私的な愛情だけで結ばれる、新たな結婚のスタートです。 ※本稿は、『美しい原文で読む-源氏物語の恋のことば100』(中央公論新社)の一部を再編集したものです。
松井健児
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