突然かかってきた税務署からの電話…「答え」を間違えた人が陥りやすい「落とし穴」とは
相続税申告の1割弱に調査が入る
これまでの一般的な常識では、「相続税についての税務調査」といえば、ケタ違いの富裕層だけが気にしておくべきことだと考えられていたかもしれない。 しかし、いまやそれは富裕層だけの問題ではなくなっている。税理士法人レガシィ代表で、多くの税務調査に立ち会ってきた税理士・天野隆氏が解説する。 「'15年の税制改正で、相続税の基礎控除額が引き下げられ(3000万円+法定相続人の数×600万円になった)、富裕層でなくても相続税が課されるケースが増えてきました。それにともなって、基礎控除を少し超えるくらいの財産の相続であっても、税務調査を警戒したほうがよくなってきています。 法定相続人の数にもよりますが、たとえば関東で言えば、埼玉、千葉、東京、神奈川といった不動産価格の高い地域で持ち家を所有しており、不動産以外の財産が2000万円を超えるような方が亡くなった場合は、税務調査を受ける可能性が十分にあることを意識しておいたほうがいい」 実際、相続税の申告の総数に対して税務調査が実施される割合は、6・9%ほどとする計算もある。しかも、税務調査に入られた家の85・8%がなんらかの追徴課税を取られている。 さらに、悪質な隠匿と認定されてしまうと、追加で納税する額の40%ほどの「重加算税」を取られるから大変だ。 では、資産家ではない「ふつうの人」は、どのような理由で税務調査の対象となることが多いのか。天野氏は、 「相続の税務調査は、多くが名義預金を対象としたものです」 と語る。栗田さんの例で見た「名義預金」こそが、税務調査を受けるか否かのカギを握る。
名義預金に潜む思わぬ「落とし穴」
「税務署は、亡くなった方の口座の取引履歴を集めたうえで、入金や出金を丹念に調べます。たとえば、亡くなった方の口座からお子さんの名義の口座に定期的に一定の額が振り込まれていれば、その口座は名義預金の疑いが濃厚だとみなされるでしょう。比較的容易に見つけることができるというわけです。 しかも名義預金は、100万円単位で追徴課税を取ることができる可能性も高い。かなりの高確率で、それなりの額の追徴課税を取れるということ。名義預金は税務署にとって『効率がいい』のです」(天野氏) 名義預金がそれほど「狙われる」とするならば、どのような対策が必要なのだろうか。 まずは、親(など被相続人となる人)が名義預金をしているかどうかを確かめることは大前提だ。そのうえで、名義預金を相続財産とするのか、生前贈与とするのかを話し合っておく必要がある。 もしその名義預金を「贈与」とする場合、さらに注意が必要となる。贈与は、年間110万円までは贈与税がかからず、これを利用した相続税対策=「暦年贈与」がしばしば行われているが、ここに意外な落とし穴があるのだ。アレース・ファミリーオフィス取締役で相続終活専門協会代表理事の貞方大輔氏が言う。 「贈与が成立するには、贈与を受けた側がその事実を知っていること、また、贈与を受けた口座の通帳や印鑑が、贈与を受けた人の管理のもとにあることが必要となります。こうした条件を満たすため、暦年贈与をする場合は、双方の合意を必ず行い、さらに万全を期すなら、契約書を交わしておいたほうがいい。贈与を受けた側が通帳や印鑑を保管することも忘れないでください」 続く2章では、名義預金をめぐるさらなる「落とし穴」と、それ以外にどのような資産が税務署のターゲットになりやすいのかを見ていこう。 『妻のへそくりに税務調査が入った際の対応方法と「妻を説得させる言葉」』へ続く 『週刊現代別冊 おとなの週刊現代 2024 vol.4 死後の手続きと生前準備』が好評発売中! 累計188万部の大人気シリーズが、大幅リニューアルでさらにわかりやすくなりました! 週刊現代の大反響記事を、加筆のうえ、ギュッとまとめた一冊です。
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